●平成15(ワ)16505 商標権 民事訴訟「ジェロヴィタール事件」

Nbenrishi2009-03-29

本日は、『平成15(ワ)16505 商標権 民事訴訟 平成17年10月11日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/5F6239473DF9FF294925709D00043FBD.pdf)について取上げます。


 本件は、金曜日の午後から受講した弁理士会会員研修の特許法第104条の3を巡る諸問題」のテキストに掲載されていた、商標事件におけるキルビー最高裁事件による「権利行使制限の抗弁」の抗弁の必要性について判示した事案です。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 障泄批チ規子、裁判官 中島基至、裁判官 田邉実)は、


3 争点(1)ア(無効理由の存在を理由とする権利濫用)について

 ・・・省略・・・

(2)争点(1)ア(イ)(商標法4条1項10号該当性)について


 ア 商標法4条1項10号は,「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて,その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務に使用をするもの」は,商標登録を受けることができない旨規定している。


 同号は,登録主義を原則とする我が国の商標制度の下において,未登録周知商標との出所の混同を防止し,その結果として先使用者の使用の事実を保護するため,周知商標と同一又は類似の商標であって,使用商品と同一又は類似の商品に使用するものを不登録事由と定めたものである。


 そして,同号に違反して登録すべきではなかったといえるか否かは,登録査定時に加えて出願時を基準として判断すべきである(同法4条3項,最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁参照)。


 すなわち,商標法4条1項10号所定の不登録事由については,出願時及び登録査定時のいずれにも該当する場合に限り,登録が阻却されるべきである。出願時には広く知られていなかった他人の商標が登録査定時までに周知となって,登録査定時に同号に該当するようになった場合に,同号該当を理由として商標登録を認められなくなるのは出願者に酷であるからである。


 イ 本件商標1及び2について


(ア) 本件商標1及び2は,その登録の日から5年以上が経過しているから,これらの各商標の登録が商標法4条1項10号に反し無効審判請求により無効とされるためには,被告の登録出願が不正競争の目的をもってされたことが必要である(同法47条)。


 しかしながら,原告は,同号違反を商標法39条の準用する特許法104条の3に基づくのではなく,権利濫用の抗弁としてこれを主張するものである。


 商標登録に無効理由が存在し,それが本来登録されるべきでないものであったのにもかかわらず,過誤により登録された場合には,仮に無効審判請求により無効とされることがなくても,そのような無効理由が存在することが明らかな商標権に基づく請求は,衡平に反し,権利の濫用として許されない(最高裁平成10年(オ)第364号同12年4月11日第三小法廷判決・民集第54巻4号1368頁参照)。


 よって,商標権の設定の登録の日から5年を経過した本件商標1及び2についても,不正競争の目的で商標登録を受けたか否かにかかわらず,商標法4条1項10号違反の無効理由の存否について判断することとする。

 ・・・省略・・・

 エ よって,商標法4条1項10号該当を理由とする無効の主張は,理由がない。

 ・・・省略・・・

(4) 小括

 以上のとおり,本件各商標登録に無効理由が存在することを理由とする権利濫用の主張は,いずれも採用することができない。


4 争点(1)イ(無効理由が存在しないとしても本件商標権行使が権利濫用に当たるか否か)について


(1)仮に,商標登録に商標法46条1項所定の無効理由が存在しない場合であっても,登録商標の取得経過や取得意図,商標権行使の態様等によっては,商標権の行使が,客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利の濫用に当たり,許されない場合があると解すべきである(最高裁昭和60年(オ)第1576号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号876頁参照)。

・・・省略・・・ 』


 と判示されました。


 詳細は本判決文を参照して下さい。