●平成21(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「闘茶」

Nbenrishi2009-12-12

 本日は、『平成21(行ケ)10127 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「闘茶」平成21年12月10日 知的財産高等裁判所(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091211115347.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法3条1項1号〜6号や、4条1項15号、16号及び19号の該当性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


『2 本件審決の当否

 前記認定事実に基づいて,本件審決の当否を判断することとするが,本件審決は,本件商標の指定商品のうちの「印刷物」のうち「書籍」についての登録を無効としたところ,この点については当事者から不服の申立てがなく,本件訴訟の対象となっていない。したがって,以下においては,本件商標に係る指定商品のうち「書籍」を除く商品(以下「本件商品」という。)の登録を対象として判断を進めることとする。


(1) 法4条1項16号該当性について

 前記認定事実によると,闘茶は,我が国においては「南北朝室町時代,茶会で本茶・非茶などを判別し,茶の品質の優劣を競った遊戯」などとして発展し,その後の衰退期はあったものの,江戸時代中期に茶道の千家七事式の1つである「茶カブキ」として受け継がれ,さらに,幕末から明治初期にかけての煎茶をもってする闘茶として現在に至るまで存続しており,本件商標の登録査定時である平成14年10月24日の時点においても,このような茶の産地等を当てる遊芸として広く知られていたものと認められる。


 しかるところ,このような茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,上記のとおりの本件商標が,本件商品に使用されたとしても,それによって,これらの商品が,当該商品そのものとは別の特徴を有する別の品質のものとして,需要者に誤認されるおそれがあるとは考え難く,したがって,その商品又は役務の真正に関し,取引者・需要者をして錯誤に陥らせるようなことがあるということができないから,本件商標は,本件商品について,法4条1項16号に該当するものということはできず,本件商標に係る指定商品を本件商品とする登録を無効とすることはできない。


 なお,原告は,闘茶の道具として,「急須,お茶,数字等が記載された札,投票箱,盆,硯,筆,茶入,茶たく,紙類(札の入れ物)」が存在することから,本件商標の指定商品中,「紙類,型紙,かるた,歌がるた,トランプ,花札(「札」の類)」は闘茶に使用されているものとして,これらを指定商品とする登録は無効とされるべきであると主張するが,これら原告主張に係る「型紙,かるた,歌がるた,トランプ,花札」が闘茶に一般的に使用されるものとは認められず,また,茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,これら原告主張に係る商品に本件商標が使用されたとしても,そのことによって,これらの商品が当該商品とは別の品質のものとして需要者に誤認されるおそれがあるものとまで認めることはできず,本件商標に係る指定商品をこれらの商品とする登録を無効とすることはできない。


(2) 法3条1項6号該当性について

 前記認定事実によると,闘茶は,本件商標の登録査定時である平成14年10月24日の時点においても,茶の産地等を当てる遊芸として広く知られており,特に茶業関係者においては,そのようなものとして一般的に広く認識されている用語と認められる。


 しかるところ,本件商品が闘茶において一般的に使用されるものとは認められず,また,茶の産地等を当てる遊芸であるとの闘茶の特徴に照らすと,「闘茶」の文字を標準文字として成る本件商標を本件商品に使用したとしても,本件商標に接する取引者・需要者が,これらの商品を,闘茶という茶の産地等を当てる遊戯のための商品というように理解するものと認めることもできず,何人かの業務に係る商品であることを認識できないとする事情があるものと認めることはできないから,本件商品を指定商品とする本件商標は,法3条1項6号に該当するということはできない。


(3) 法3条1項1号ないし5号該当性について

 「闘茶」の標準文字から成る本件商標は,本件商品についてみると,これらの普通名称(法3条1項1号関係)ではなく,これらの商品について慣用されている商標(同項2号関係)ではなく,これらの商品の産地,販売地等の同項3号に記載されている事項を普通の態様で表示する標章のみからなる商標(同項3号関係)ではなく,ありふれた氏又は法人や団体等の名称を普通の態様で表示する標章のみからなる商標(同項4号関係)ではなく,例えば,単なる直線や円又は球や直方体などの立体的形状のみからなるなどの,極めて簡単で,かつ,ありふれた標章のみからなる商標(同項5号関係)ではないから,本件商品に係る本件商標は,法3条1項1号ないし5号に該当するということはできない。


(4) 法4条1項15号及び19号該当性について

 前記認定事実によると,闘茶は,我が国において,現在に至るまで,茶の産地等を当てる遊芸として広く知られているが,特定の者としての他人の業務に係る商品又は役務を示すものとして取引者・需要者に広く知られていると認めることはできないから,本件商標を本件商品に使用しても,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれはなく,本件商標は,法4条1項15号に該当しない。


 また,本件審決は,原告の本件商標が法4条1項19号に該当するとの主張は,本件審判請求後に追加されたものであって,新たに無効理由を追加し,請求の理由の要旨を変更するものであるから,法56条1項で準用する特許法131条の2第1項により認められないとしたところ,仮に同項19号該当性について判断するとしても,上記のとおり,闘茶は,他人の業務に係る商品又は役務を示すものとして取引者・需要者に広く知られていると認めることはできないから,本件商標は,同号にも該当しない。


3 結論

 以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。