●平成21(行ケ)10339 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10339 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100330154956.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法4条1項7号,15号(同法47条1項の「不正の目的」)又は同法4条1項19号及び同法3条1項6号似ついての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知材高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 大須賀滋、裁判官 齊木教朗)は、


『当裁判所は,本件商標が,商標法4条1項7号,15号(同法47条1項の「不正の目的」)又は同法4条1項19号及び同法3条1項6号に該当するとの原告の主張は,いずれも理由がないか,又は主張自体失当であると判断する。その理由は,以下のとおりである。


1 商標法4条1項7号該当性の判断の誤りについて

(1) 他人の著作権との抵触に係る判断の誤りについて

 原告は,本件商標を構成する図柄が,第三者(故ハーベイボール)の有する著作権の範囲に含まれることを理由に,本件商標は,商標法4条1項7号に該当する商標であると主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。

 すなわち,登録商標に係る図柄等について,第三者の有する著作物に係る支分権(複製権,翻案権等)の範囲内に含まれることがあったとしても,商標法及び著作権法の趣旨に照らすならば,そのことのみを理由として当然に当該商標が商標法4条1項7号所定の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものということはできない。


 仮に,本件において,原告が主張するとおり,1963年に故ハーベイ・ボールが引用図形(別紙「引用図形」参照,スマイリー・フェイス)を著作,創作したものであったとしても,本件商標が,商標法4条1項7号に該当するとはいえない。すなわち,1960年代後半から1970年代に,米国でスマイル・マークが流行し,また,1970年代後半,我が国においてもスマイル・マークがブームを招いたという事情があったとしても,?ハーベイ・ボール自身は,スマイリー・フェイスについて商標登録をする意思もなく,第三者が自由にスマイリー・フェイスを使用することを容認し,金銭的な見返りを求めていなかったことが窺えること(甲5,6),?原告の主張によっても,原告が多額の費用負担をしてスマイリー・フェイスを慈善活動やボランティア活動に活用し,同マークの社会的イメージを向上させるようになったのは,平成10年ころ以降であることから(原告準備書面(1)10頁G1),被告には,平成3年3月8日の本件商標の登録査定時において,「スマイル・マーク」の良好なイメージに便乗する意図はなかったと解されること,?原告の主張によれば,平成3年の本件商標の登録査定当時には,日本でのスマイル・マークのブームは収束し,商標登録をしていた商標権者らもその更新登録をしないで商標権を放棄する傾向があったこと等の事情を総合考慮するならば,本件商標が,商標法4条1項7号所定の商標に該当すると認めることはできない。


(2) 国際信義違反に係る判断の誤りについて

 前記(1)の?ないし?の諸事情のほか,本件において,原告が主張する引用図形(別紙「引用図形」参照)が本件商標の登録査定(平成3年3月8日)当時の米国において既に平和のシンボルとされていたとか慈善活動に使用されていたことを認めるに足りる証拠もないことに照らすならば,本件商標の使用が国際信義に反するとの理由により,本件商標が商標法4条1項7号に該当する商標ということはできない。


 よって,これと同旨の審決の判断に誤りはなく,この点に係る原告の主張は採用の限りでない。


2 商標法4条1項15号該当性の判断の誤りについて

 原告は,本件商標が商標法4条1項15号に該当すると主張する。

 しかし,原告の主張は採用の限りでない。すなわち,前記説示のとおり,原告が莫大な投資をしてスマイリー・フェイスを慈善活動やボランティア活動に活用し,同マークの社会的イメージを向上させるようになったのは,平成10年ころ以降のことであるから,平成3年3月8日の本件商標の登録査定時においては,上記イメージに被告が便乗する意図を有しなかったというべきであり,本件商標の登録が「不正の目的」によるものであると認めることはできない。よって,本件商標の設定登録の日から5年の除斥期間が経過したことにより,商標法4条1項15号を理由とする無効審判請求は不適法であるとした審決の判断に誤りはない。


3 商標法4条1項19号該当性の判断の誤りについて

 原告は,本件商標が商標法4条1項19号に該当すると主張する。

 しかし,前記1及び2で説示したとおり,本件商標は,「不正の目的」をもって使用をするものであるとは認められないから,商標法4条1項19号に該当するとはいえない。よって,これと同旨の審決の判断に誤りはなく,これを誤りであるとする原告の主張は採用の限りでない。


4 商標法3条1項6号該当性の判断の誤り

 原告は,本件商標は,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標として,商標登録を受けることができないものとなっていたから,商標法3条1項6号に該当すると主張する。


 しかし,原告による無効審判請求時(平成21年1月23日)には,本件商標の設定登録の日(平成3年11月29日。甲1)から5年以上が経過しているから,商標法3条1項6号を理由とする無効審判請求は商標法47条1項により不適法である。よって,これと同旨の審決の判断に誤りはなく,審決の判断に誤りがあるとする原告の主張は採用の限りでない。


5 結論

 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。原告は,その他にも縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,原告の本訴請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。