●平成23(行ケ)10188 審決取消請求事件 商標権「つつみのおひなっ

 本日は、『平成23(行ケ)10188 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年10月20日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111024163206.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判の棄却審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1および取消事由2についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 齋藤巌)は、


『1取消事由1(本件審判の請求が商標法56条1項において準用する特許法167条の規定に違反しないとした判断の誤り)について


(1) 被告は,先願商標について商標登録を受けたが,先願商標については,前記第2の3(2)のとおり,平成18年10月18日,その商標登録を無効にすべき旨の審決を受け,同審決は同年11月29日に確定しているところ,これに対し,被告が本件商標について登録出願をしたのは,この審決を受けてから確定するまでの間の前記平成18年11月10日である。


 (2)原告は,以上の経緯を前提に,先願商標に対する無効審決の効力が本件商標には及ばないとした本件審決の判断は,商標法56条1項において準用する特許法167条に違反する旨主張するが,そもそも,特許法167条は,「何人も,特許無効審判の確定審決の登録があったときは,同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない」旨を規定し,特許無効審判等について無効審判の確定の登録があったときは,同一の事実等に基づいて審判の請求をすることを禁止したものにとどまるものであって,無効と判断された登録商標と構成を同じくする商標について,指定商品を異なるものとした上で再度出願することそれ自体を禁止するものではない。


 もっとも,原告が本件において特許法167条違反をいうのは,併せて,信義則違反と権利の濫用とに言及していることに鑑みると,本件商標の登録出願は,先願商標を無効にすべき旨の審決を受けた後であることから,本件商標の出願は無効と判断された先願商標の再生と無効審決を潜脱する不正な目的でされたものであって,そのような商標の登録は認められるべきでないという趣旨に解されなくもない。


 しかしながら,先願商標の商標登録を無効と判断した審決の理由(甲1)は,普通名称であるという「堤人形」の文字を含む先願商標をその指定商品中,「堤人形」以外の「土人形」及び「陶器製の人形」について使用するときは,これに接する需要者は,該商品があたかも堤人形であるかのように,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるとして,商標法4条1項16号に該当するというのである。その出願人である原告において,先願商標の指定商品を「堤人形」に限定した上で,先願商標と同じ構成に係る本件商標の登録出願をすることそれ自体は,止むを得ない措置であったというべきであって,それが当該商標登録の無効理由に当たる場合は格別,そうでない以上,本件商標の登録出願を直ちに不正な行為であるということはできないし,原告に対する関係でみても,これを信義則違反や権利の濫用に当たるものということもできない。


(3)したがって,原告主張の取消事由1は,理由がないというほかない。


2取消事由2(本件商標の無効理由に係る判断の誤り)について

(1)商標法4条違反について

ア商標法4条1項16号違反について

 原告は,本件商標は商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるとして,商標法4条1項16号に違反すると主張しているが,その具体的な理由については何ら主張,立証しておらず,これを採用することはできない。


イ商標法4条1項15号及び同項19号違反について

 また,原告は,本件商標は商標法4条1項15号及び同項19号に違反するとも主張している。

 しかしながら,本件審決は,本件商標の無効理由として,本件商標が商標法4条1項15号及び同項19号に違反するか否かは判断していないから,これらの各号に関する事項は,本件訴訟の審理の対象とはならないというべきである。


 したがって,原告の主張は失当である。

(2)商標法6条違反について

 また,原告は,本件商標の出願は普通名称による指定商品の分類を定める商標法6条に違反するなどとも主張する。


 しかしながら,商標法46条1項は,商標登録を無効とする審判を請求することができる事由を定めているところ,同項の定める無効理由に同法6条違反は含まれていないから,同法6条違反を理由として,本件商標の無効を求めることはできず,原告の主張は失当といわなければならない。

(3)その他の主張について

 また,原告は,「堤人形」は,商品区分としての指定商品自体ではなく,原告の商標権の要をなすものであり,本件審決がこれを単なる指定商品と解したのは,商標法4条,6条はもとより,36条以下の商標権侵害の規定の解釈適用を誤ったものであるなどとも主張する。


 しかしながら,本件商標に対する原告の無効審判請求について,本件商標の指定商品が「堤人形」であることを前提としてその無効理由の有無を判断した本件審決それ自体にこれを取り消すべき違法があるとは認められないから,原告の主張は採用することができない。


(4)小括

 したがって,原告主張の取消事由2も,理由がないといわざるを得ない。』

 と判示されました。