●平成17(ワ)10223 「プラズマエッチング設備におけるエンドポイント

 本日は、『平成17(ワ)10223 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「プラズマエッチング設備におけるエンドポイントの検出装置」 平成19年07月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070730110907.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害訴訟に係る案件で、被告側に先使用による通常実施権(特許法79条)の援用が認められた事案です。


 久しぶりに裁判所にて先使用施権(特許法79条)が認められており、参考になる事案かと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 設樂隆一 裁判長)は、


『争点2(AM社ないし被告は,本件特許発明について,先使用による通常実施権(特許法79条)を有するか。)について


(1)ア証拠(乙3ないし7,乙8の1ないし4,乙10,乙11の1及び2,乙12,乙13)及び弁論の全趣旨によれば,被告がAMJ社から購入したイ号物件は,いずれもAM社が製造販売したもので,被告の魚津工場において使用されているものであり,その購入時期等は以下のとおりであると認められる。


a) 資産番号ME − 61705 平成6年10月購入のもの(乙3,乙7,乙8の1,乙10)
b) 資産番号ME − 64385 平成7年10月購入のもの(乙4,乙7,乙8の2,乙11の1及び2)
c) 資産番号ME − 64400 平成7年10月購入のもの(乙5,乙7,乙8の3,乙12)
d) 資産番号ME − 64404 平成7年10月購入のもの(乙6,乙7,乙8の4,乙13)


イ 上記のとおり,被告はその使用するイ号物件のいずれも本件特許の優先日である平成7年12月13日よりも前に購入したものである。


 そして,イ号物件の製造者であるAM社は,上記認定のとおり,本件特許発明の優先日の14月も前に,イ号物件を製造販売していたのであるから,原告が本件特許発明の優先日の14月よりも前に本件特許発明を完成していたにもかかわらず,これを出願していなかったとか,出願もせずにこれをAM社に教示し,AM社のみが本件特許発明を実施していたとは,到底考えにくいことからすれば,AM社は,本件特許発明の内容を知らないで自らその発明をし,イ号物件を製造販売したものと認めるのが相当である。したがって,AM社は,本件特許発明について,イ号物件に具現されている技術思想と同一性を有する範囲内で先使用による通常実施権を有する。


 この点,原告は,半導体製造装置の業界では,半導体メーカーと装置メーカーとが情報交換等を行い,その情報を基礎として装置の開発を行うことが頻繁に行われており,現に原告はAM社のビッグユーザーで,AM社と常に製造装置の改良等について情報交換を行ってきたものであるから,AM社がイ号物件を本件特許の優先日以前に製造したとしても,直ちにAM社の善意を推定できるわけではないなどと主張する。


 しかし,本件証拠上,原告が本件特許発明の優先日よりも14月以上も前から,AM社と取引関係にあり,本件特許発明について情報提供をしていたことを窺わせるような事情は,何ら見あたらず,原告の主張は上記認定を左右するものではない。


(2) 被告は,本件特許発明について先使用による通常実施権を有するAM社の製造販売にかかる上記(1)アa)ないしd)のイ号物件をAMJ社から購入して,以後これらを使用しているものである。先使用権者が製造販売した製品を使用する行為が特許権侵害行為に当たらないことは明らかであるから,被告の上記行為が本件特許権を侵害するものではないことも明らかである。


第5 結論

 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


 追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成19(行ケ)10090 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「海」平成19年08月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831114343.pdf
●『平成19(行ケ)10064等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「車両の自動ブレーキ装置の作動装置」平成19年08月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831113835.pdf
●『平成19(ネ)10035 損害賠償請求控訴事件 不正競争 民事訴訟「ゴムシートの連続製造技術等のノウハウ」平成19年08月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831110833.pdf
●『平成18(行ケ)10559 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「腹膜透析または連続的な腎臓置換治療のための2部分の重炭酸塩ベースの溶液」平成19年08月30日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831094338.pdf
●『平成18(ワ)1337 商標権侵害差止請求事件 商標権 民事訴訟「エルテ」平成19年08月29日 東京地方裁判所』(認容判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831111145.pdf
●『平成17(ワ)22016 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「ケーブル用コネクタ」平成19年08月29日 東京地方裁判所』(棄却判決)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070831103530.pdf



 追伸2;<気になった記事>

●『USPTO が継続出願及びクレーム制限に関する改定規則を公表〜制限は当初案より緩和される〜』(JETRO)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/070828_1.pdf
●『税関及び国境保護局が知的財産侵害品に係る07 年度上期差押え統計を発表 〜金額ベースで対前年同期比2.4 倍、件数ベースでは2 割増〜』(JETRO)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/070828_2.pdf
●『USPTO が物価上昇に伴う手数料改定案を公表 〜消費者物価上昇分(2.8%増)を08 年度手数料に反映〜』(JETRO)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/070828_3.pdf
●『米大学関係五団体が発明の早期公表を阻害するとして先使用権拡大に反対の書簡を提出』(JETRO)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/070829.pdf