●平成19(行ケ)10147審決取消請求事件「ソーワイヤ用ワイヤ」(3)

Nbenrishi2008-04-08

 本日も、『平成19(行ケ)10147 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ソーワイヤ用ワイヤ」平成20年03月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080328134125.pdf)について取り上げます。


 本日は、特許法36条4項違反の実施可能要件違反の判断について取り上げます。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 大鷹一郎、裁判官 嶋末和秀)は、


4 取消事由4(特許法36条4項違反の判断の誤り−実施可能要件違反について)について


(1) 原告は,本件明細書の発明の詳細な説明には,段落【0007】に,一般のワイヤを製造するための漠然とした記載があるのみであり,本件特許発明に係る内部応力測定方法及び「ソーワイヤ用ワイヤ」の製造方法のいずれについても具体的な記載がない,また,本件明細書の発明の詳細な説明には,ワイヤの曲率変化から内部応力を算出するための算出式が示されていないので,当業者は,本件特許発明を実施するに当たり,この算出式を自ら導出しなければならないが,この作業には,多大な労力を要し,新たな発明行為に匹敵するほどの困難性がある,したがって,本件明細書の発明の詳細な説明に,当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないので,本件明細書は,実施可能要件を満たさず,本件特許は特許法36条4項に違反すると主張する。


  しかし,原告の主張は,以下のとおり理由がない。


(2)ア 本件特許発明に係る内部応力測定方法及び「ソーワイヤ用ワイヤ」の製造方法については,本件明細書の発明の詳細な説明中に,前記2(1)イ(ア)fのとおりの記載(段落【0007】)がある。


 そして,ワイヤ表面から15μmの深さまでの層除去の前後におけるソーワイヤの曲率変化から内部応力を求める本件特許発明の内部応力の測定方法は,本件出願時に確立された方法であったこと(前記1(1)ア(イ)d),本件出願時に,本件特許発明に規定する内部応力の数値範囲のワイヤを製造することができたこと(前記1(1)イ(ウ))に照らすならば,本件明細書に接した当業者であれば,本件特許発明を実施することは十分に可能であったものと認められる。


また,甲47(別件訴訟の専門委員の意見書)に,甲26(別件訴訟乙7)に記載された本件特許発明に係る残留応力算出式は,材料力学の基本理論から想起でき,その最終の算出式を導出するための途中の各式も簡単ではないものの導出できる旨の記載があることに照らすならば,本件明細書の発明の詳細な説明に,ワイヤの曲率変化から内部応力を算出するための算出式が示されていないからといって,当業者にとって,本件特許発明の内部応力測定方法により内部応力を求めることに多大な労力を要し,新たな発明行為に匹敵するほどの困難性があるとまでは認められない。


ウ したがって,本件明細書は実施可能要件を満たさないとの原告の主張は理由がない。


(3) 以上によれば,本件特許は特許法36条4項に違反しないとした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由4は理由がない。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

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●『台湾アスーステックIBMを特許侵害で反訴(ASUSTeK)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3189
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