●『JRのスイカ(Suica)カードの特許出願』(1)

Nbenrishi2006-07-09

今日は、昨日も言いましたとおり、今まで3回ほど判決をコメントしてきた「ソニー株式会社」と「財団法人鉄道総合技術研究所」との共同出願によるJRのスイカSuica)カードの特許出願(特願平5−343517号;特開平7−175901)について、コメントします。


 なお、特許庁電子図書館(IPDL)は、7月7日(金)20:00 〜7/10(月)までメンテ中で、アクセスできませんが、例えば、「esp@cenet」(http://ep.espacenet.com/search97cgi/s97_cgi.exe?Action=FormGen&Template=ep/en/number.hts)で本願の公開番号“JP7175901”入れれば、本件出願の公開公報(http://v3.espacenet.com/origdoc?DB=EPODOC&IDX=JP7175901&F=0&QPN=JP7175901)を閲覧できます。


 さて、本出願は、7/6日の日記にも書きましたが、研究所の友人からの「JRのスイカ(Suica)のカードの基本特許って、ソニーが持っているらしいけど、知っている?」の一言により、探していたこともあり、多少、ワクワクというか、期待をしながら、本出願の公開公報に目を通していきました。


 最初、本出願の公開公報を見てまず思ったのは、

ソニーの特許明細書にしては、図面が5枚しかないし、薄いな。』

 また審査履歴を調べて思ったのは、

『審査請求時期は、出願日から7年ギリギリでソニーらしいな。』

でした。


 そして、まず、公開公報の要約の欄に目を通し、要約の【目的】の「情報記憶カードの使用状況をより安価に管理することができるシステムを実現できるようにする。」を読み,続いて【解決手段】の「・・・メモリ22は、無限ループ状に情報を記録する領域を有しており、常に最新の使用状況を記憶することができる。」と読むが、まだ、「無限ループ状に記憶」の構成と、「情報記憶カードの使用状況をより安価に管理」の関係がまだピンときませんでした。


 次に、特許請求の範囲の請求項1を読むと、
「情報を入出力する入出力手段と、
 前記入出力手段より入力された情報を無限ループ状に記憶する記憶手段と、
 前記記憶手段に対する情報の書き込みと読み出しを制御する制御手段とを備えることを特徴とする情報記憶カード。」
であり、

『かなり、上位クレームで請求しているな。』

と思いました。


 請求項1の特徴は、誰が見ても「前記入出力手段より入力された情報を無限ループ状に記憶する記憶手段」しか有りえないのですが、「無限ループ状に記憶」の意味がまだわかりませんでした。


 そして、【従来技術】を読むと、本出願の情報記憶カードが鉄道に使われるICカードのまさしくスイカカードが発明の対象であることがわかり、【発明が解決しようとする課題】、【課題を解決するための手段】と読んでいき、【作用】の欄の

「・・・その記憶位置が無限ループ状につながるように制御される。したがって、情報記憶カードに、最新の所定量の情報を記憶しておくことができ、中央の装置において管理しなければならない情報量を、その分だけ小さくすることが可能となり、より低コストのシステムを実現することが可能となる。」で、ようやく「無限ループ状に記憶」の意味がわかりました。


 そして、ここにきて、

『JRのスイカ(Suica)のカードって、この特許出願の内容通りであれば、最新の所定量の情報を記憶するメモリカードであったんだ。』

と思いました。



 そして【実施例】を読んでいくと、【0017】に
「この情報記憶カードは、カード識別装置31との間で、無線電波により、情報の授受を行うようになされている。」
と記載されており、

『これは、非接触ICによる無線通信を利用しており、完全にスイカ(Suica)と同じであるな。』

と思いました。


 そして、【実施例】を読み進めていき、動作の説明で、カード識別装置31は、カード1のメモリ22に記憶されているIDを読み取り、適正なものであるか否かを判定し、さらにカード識別装置31が、メモリ22に記憶されている残高を読み取り、この残高が充分な金額であるかを判定する、と読むと、


『スイカ(Suica)のカードには、残高が記憶されているのか。』


と思いました。


 銀行のATMのカードやクレジットカードであれば、磁気カードであるので、カード自体には暗証番号やID番号だけで、預金情報などは記憶されないので、正直、本発明は、良いアイデアであるなと思いました。


 明日へ続きます。


追伸;<今日、気になったニュース>
●『食品履歴を完全追跡、10年度までに実用化・総務省方針』
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=AS3S0702O%2008072006
●『世界初の音が出るスクリーン,コジマとオーセンティック,帝人ファイバーが開発』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060707/118966/?ST=d-ce
●『ノバックがSkype用テレビ・チューナを発売, Skypeを通じてどこからでも自宅で受信したテレビ番組を視聴可能に【追加情報あり】』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060707/118943/?ST=d-ce