●『JRのスイカ(Suica)カードの特許出願』(2)

 昨日の続きで、ソニー鉄道総合技術研究所とによるJRのスイカSuica)カードの特許出願(特願平5−343517号)についてコメントします。


 どんな明細書でも同様ですが、発明のポイントがわかると、実施例の内容もすんなりと理解できるようになります。


 本出願も、カードに履歴情報等を最新のものから所定容量までループ状に記憶することの意味を念頭に入れて実施例を読むと、実施例の内容がすんなりとわかります。つまり、この出願の実施例では、この情報記憶カード1を用い、使用者がある駅で乗車し、他の駅で降車すると、降車駅のカード識別装置31が情報記憶カード1から読み出されたIDが適正なIDであるか否かを判定するとともに、乗車駅から降車駅までの運賃を演算し、演算した運賃をカードから読み取った残額から減算して、新たな残高や、降車駅、その時刻情報などの履歴情報を情報記憶カード1に書き込んでいくことがわかります。


 そして、本願明細書の【0038】には、

『【0038】使用者は、情報記憶カード1の残高等について疑問がある場合、その情報記憶カード1を所定の駅の窓口に提示する。このとき、窓口の駅員は、そこに配置されているカード識別装置31に対し、その情報記憶カード1の使用履歴記憶領域43に記憶されているデータの読出しを指令する。送受信回路21は、この指令の入力を受けたとき、書込読出制御回路23を制御し、メモリ22の使用履歴記憶領域43に記憶されているデータを読み出させる。このデータは、送受信回路21から、アンテナ12を介して、カード識別装置31に伝送される。カード識別装置31は、使用履歴記憶領域43に記憶されていたデータをCRT(図示せず)等に表示させる。駅員は、これを見て使用状況を確認する。そしてその使用状況に対応して必要な措置を施す。』

というように、履歴情報の印字等の処理が説明されています。


 スイカ(Suica)のシステムの概略が、かなりわかったように思いました。


 なお、本願明細書の【0044】〜【0047】のいわゆる尚書きの記載が、本出願の展開が考えられており、上手いと思いました。


 つまり、【0044】〜【0047】には、

『【0044】以上においては、本発明の情報記憶カードを鉄道システムに応用した場合を例として説明したが、移動物体を管理する場合にも応用することが可能である。
【0045】即ち、例えば、図4に示すように、移動物体51が移動するフィールド52の所定の位置にカード識別装置31を配置する。そして、移動物体51に情報記憶カード1を保持させる。
【0046】このようにすると、例えば、移動物体51が経路Pに沿って移動した場合、この経路Pの近傍に配置されているカード識別装置31が、情報記憶カード1と無線で通信するため、情報記憶カード1には、経路Pに対応する情報が、そのメモリ22の使用履歴記憶領域43に書き込まれることになる。従って、所定のタイミングで情報記憶カード1の使用履歴記憶領域43の情報を読み出すことにより、移動物体51の移動した経路Pを確認することができる。
【0047】この移動物体51としては、人、自動車、家畜あるいは野生の動物等が考えられる。』

と記載されています。


 【0047】の移動物体51の具体例に、流通される「商品」や「食品」がないのが残念ですが、「自動車」があるのが大きいと思います。


 つまり、移動物体51の具体例として、流通される「商品」や「食品」がないので、本発明が特許になった場合に、その特許発明の技術的範囲が、RFID等による「商品」や「食品」の流通等の経路追跡管理システムにまで権利範囲が及ぶか否かは、何とも言えません。


 しかし、移動物体51の具体例として、「自動車」があるので、本発明が特許になった場合、もしかすると、高速道路のITSカード等の基本特許にもなるかも知れません。


追伸;<今日、気になったニュース>
●『松下、世界最大103V型フルHDプラズマパネルを発売』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/10/news065.html
●『【SINOCES】中国最大の家電展示会が開幕,展示規模は30%増と拡大続く』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060709/118967/