●特許法第1条と「人工乳首事件」

 昨日、「人工乳首事件」の前提を間違えていました。昨日の日記を赤字により修正します。なお、「人工乳首事件」の概要は、例えば、http://www.snowdrops.gr.jp/preziofiles/4_ip_prejp_no2_1.shtmlに記載されています。
 

 さて、「人工乳首事件」は、請求項がA(人工乳首)+B(伸張部)であり、明細書にA+B+C(環状形態の伸張部を有する人口乳首)からなる実施例の発明1が開示されている出願に、国内優先により後から構成要素A+B+D(螺旋状形態の伸張部を有する人工乳首)の実施例の発明2を追加した場合であります。


 この場合、発明1,2が新規性や進歩性等を満たしてれば、1出願として特許になります。また、発明1,2とを別々に出願したとしても、発明2の請求項をA+B+D等にすれば、請求項上の発明1,2は構成が異なるので、双方が特許になるものと思います。
 
 ただし、「人工乳首事件」では、発明2を追加する国内出願前に構成要素A+B+Dからなる製品が公知になっていますので、この場合、発明2の部分は、別出願であろうと、国内優先であろうと、特許になりません。特許になるとすれば、特許法第1条の趣旨に反することになるからです。また、別出願では無効になり、国内優先であれば特許になるというのでは、明らかに法的バランスを欠きます。


 そして、発明1にのみ特許権が成立した場合、その明細書に記載された実施例がA+B+C(環状形態の伸張部を有する人工乳首)でも、当業者がその明細書全体、例えば、本発明の目的や効果等の記載や実施例のA+B+Cから容易に製品のA+B+D(螺旋形状の伸張部を有する人口乳首)を想定できるものであれば、特許法第1条の趣旨からして、発明1の明細書にA+B+Dが開示されていたものとみなせます。
 
 よって、発明2は拒絶されたとしても、製品A+B+Dは、文理上も発明1の特許請求の範囲に技術的範囲に含まれ、かつ、発明1の明細書全体を参照して当業者が製品A+B+Dを容易に思いつくものであれば、製品A+B+Dは発明1の技術的範囲に含まれ、発明1の特許権の侵害になるものと思います。


 これに対し、製品A+B+Dが、文理上、発明1の特許請求の範囲に技術的範囲に含まれたとしても、発明1の明細書全体から容易に思いつくものでなければ、特許法第1条の趣旨より発明1の明細書に開示されたものといえないので、製品A+B+Dは発明1の技術的範囲に含まれないものになるように思います。


 追伸;<今日、気になったニュース>
●『日中韓標準化情報交換会合が開催される』
http://www.arib.or.jp/osirase/news/index.html
・・・RF−IDの標準化を決めるための作業部会設置が決定されたようです。
●『CD、DVD技術特許 日本の出願7割強 特許庁が調査』
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/index.cfm?i=2006042609908b3
・・・1990―2003年の間、日本は、光ピックアップに関する特許を4万1103件(世界の74%)出願していたとのことです。