●特許法第1条と「人工乳首事件」(2)

 なお、「人工乳首事件」で、仮に、発明1,2を別出願して双方特許になった場合、製品A+B+Dは、発明1,2の2つの特許の権利侵害になります。国内優先であれば、発生する権利は1つですが、発明1,2の特許権の侵害になります。


  以上まとめると、請求の範囲がいくら広い形で特許になっても、明細書の開示範囲が狭ければ,特許法第1条により、明細書の開示範囲しか技術的権利範囲が及ばない、ということです。勿論、明細書の開示範囲とは、明細書に直接記載されている事項の他、当業者が明細書に開示されていると認識できる事項も含みます。


 一方、いくら明細書の開示範囲が広くても、請求の範囲が狭ければ、特許法第70条の規定通り、請求の範囲に基づいて技術的範囲が判断される、ことになります。


 結局、特許発明の技術的範囲は、その明細書または図面の開示範囲(特許法第1条が根拠)と、特許請求の範囲(特許法第70条が根拠)とのAND部分(共通部分)しか及ばない、ということだと思います。


 おそらく、今までの侵害訴訟系の判決は、およそこのような結果になっているものと思います。

 何か、吉藤先生の特許法概説等の基本書に記載されている基本的なことを書いてきたよう気もしてきました。でも、実際に文章で書いてみると、自分なりに色々と整理され、結構、勉強になります。


 追伸;<今日、気になったニュース>
●『知財紛争、中国はこれまでに10億ドルの賠償金 中国科学技術相 』
 http://www.sankei.co.jp/news/060428/kok070.htm
●『フィンランドNokia,特許論争で2億5300万ドルの支払いに合意 』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/USNEWS/20060428/236541/
●『平成17年度 特許出願技術動向調査の結果について〜Part3. 情報通信関連技術(情報処理関連)〜』
http://www.meti.go.jp/press/20060426001/doukouchousa%20part3-set.pdf
・・・「光ピックアップ技術」、「デジタル著作権管理(DRM)」、「電子商取引」について掲載されています。
●『松下・東芝がつばぜり合い・次世代DVD発表会の謎を解く』
http://it.nikkei.co.jp/digital/special/net_eh.aspx?n=MMITea000027042006