●「偏光フィルム事件」と「アイスクリーム充填苺事件」等

 「偏光フィルム事件」の判決文を少しずつ読んでいますが、特許法第1条の公開の代償として特許付与という法目的から、明細書に開示されていない発明が請求の範囲に記載されている場合には、査定系では無効理由とし、侵害系では、特許権の効力が及ばない、とする論理は、結構明解であるなと思いました。


 勿論、この「明細書に開示」の範囲には、この「偏光フィルム事件」の判決文に記載されているように、明細書に直接記載された事項の他、明記されなくても、当業者が明細書の記載から思いつくものも含まれるものです。


 このように特許法第1条の法目的に基づくと、侵害系の事件(例えば、「アイスクリーム充填苺事件」等)や、査定系の事件(例えば、「人口乳首事件」等)も含め、ほとんどの判例は、すんなりと理解できるように思います。


 例えば、侵害系の「アイスクリーム充填苺事件」では、クレームの範囲が機能的記載で広いものの、明細書に開示された実施例はその機能を達成するための狭い具体例しか開示していないので、裁判所は、特許発明の技術的範囲を明細書の開示範囲にあわせて限定的に解釈しており、公開の代償として特許を付与する特許法第1条の法目的の論理に合うものです。なお、明細書の開示範囲に応じてどこまで限定解釈するかは、ケースバイケースになると思います


 また、査定系の「人口乳首事件」でも、「伸張部」という用語が請求の範囲に記載された基礎出願に後から国内優先権により追加した螺旋形状のものは、国内優先権の効果が認められないものの、基礎出願の特許発明の技術的範囲に含まれることは、何ら特許法第1条に反しないものと考えます。
 
 その理由は、少し長くなりそうなので、明日書きます。


 追伸;<今日,気になったニュース>
●『ハイニックスへの特許訴訟でラムバスが勝訴--賠償金3億650万ドルを勝ち取る』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060425-00000010-cnet-sci
●『ソニーvs松下vsシャープの薄型テレビ三つ巴戦争』
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20060424/101623/
●『先端技術は企画端末から──ドコモのFOMA戦略』
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0604/22/news013.html