●平成21(ワ)32515 損害賠償等請求事件 特許権「電話番号情報の自

 本日も、『平成21(ワ)32515 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟「電話番号情報の自動作成装置」平成26年1月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140210095246.pdf)について取り上げます。


 本件では、被告装置5の均等侵害についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二、裁判官 郄橋彩、裁判官 植田裕紀久)は、


『(3) 被告装置5の均等侵害


特許請求の範囲に記載された構成中に特許権侵害訴訟の対象とされた製品と異なる部分が存在する場合であっても,? 上記部分が特許発明の本質的部分ではなく(第1要件),? 上記部分を当該製品におけるものと置き換えても特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって(第2要件),? そのように置き換えることに特許発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が被告製品の製造等の時点においてかかる置換を容易に想到することができたものであり(第3要件),? 当該製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願時に容易に推考できたものではなく(第4要件),かつ,? 当該製品が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない(第5要件)ときは,当該製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するとされる最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁)。


 被告装置5は,構成要件Aの「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」との部分を,「平成21年2月26日以前に被告装置4に蓄積された既存の電話番号データ」という実施態様(a)及び「市外局番と市内局番について新たな総務省からの割当ての度に装置に手動で入力し,連続する予め電話番号が存在すると想定される下4桁の番号を付加した電話番号を一つずつ自動生成する手段」という実施態様(b)に置き換えたものであるところ,原告は,「番号テーブル」の内容が本件発明の本質的部分であるから,その内容を備えていれば,これをコンピュータ装置で利用できるようにする方法は当業者が適宜に選択することで足りると主張するものである。


イ そこで判断するに,本件発明は,従来,実在する電話番号を知る方法や実在する電話番号の変更情報を全て得る方法が存在しなかったところ,実在する電話番号を収集し,正確な電話番号の利用状況を示す電話番号情報として提供するという課題の解決手段として,電話番号が実在すると想定される番号の番号テーブルを作成し,これを利用して電話番号の利用状況の調査をするものである(甲2。段落【0001】,【0005】,【0010】,【0011】等参照)。


 これに加え,前記前提事実,証拠(乙19,179の2,11,23,26〜29,33及び37)によれば,本件特許の出願経過について,? 原告が,本件特許の特許出願時の特許請求の範囲の請求項1の構成要件Aに相当する記載(「予め電話番号が実在すると想定される番号の番号テーブルを作成する手段」)を,平成15年3月26日提出の手続補正書(乙179の11)により「市外局番と市内局番と連続する4桁の番号から構成されている電話番号が実在すると想定される番号の番号テーブルを自動的に作成する手段」と補正したところ,特許庁審査官は,引用文献(特開平7−177214号公報。乙180)を引用例として進歩性を欠くとの拒絶理由通知(乙179の23)を発したこと,? 原告は,平成16年1月19日提出の手続補正書(乙179の28)により,上記部分を「市外局番に該当する市内局番と,各局番に対応する下4桁の連番数字を生成し,実在すると想定される電話番号の番号テーブルを自動的に作成しハードディスクに登録する手段」と補正するとともに,同日提出の意見書(乙179の26)において,引用例には,番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段の開示がない旨を述べたこと,? 上記?の補正にもかかわらず,上記拒絶理由通知の理由により拒絶査定(乙179の33)がされたため,原告は,拒絶査定不服審判の審判請求書(乙19)において,本件発明は「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」が中核的構成要件であると述べるとともに,平成19年6月15日提出の補正書(乙179の37)により,上記部分を「市外局番と市内局番と連続する予め電話番号が存在すると想定される番号の番号テーブルを作成しハードディスクに登録する手段」と補正し,本件特許の特許登録がされるに至ったこと,以上の事実が認められる。


ウ 上記事実関係によれば,本件発明の本質的部分は,実在する電話番号を収集しその利用状況を調査するために,実在すると想定される市外局番及び市内局番とこれに連続する4桁の番号からなる全ての電話番号の番号テーブルを作成してこれをハードディスクに登録するという構成を採用した点にあると解される。したがって,特許請求の範囲に記載された構成と被告装置5の相違点は,本件発明の本質的部分に当たるということができる。

 さらに,上記出願経過に照らせば,原告は,拒絶理由を回避するために,特許請求の範囲を「ハードディスクに登録する手段」を有する構成に意識的に限定したものと認められる。


 したがって,均等の第1要件及び第5要件を欠くから,被告装置5は,本件発明と均等なものとはいえず,その技術的範囲に属しないというべきである。


(4) 以上のとおり,被告装置2〜4は,携帯電話の調査に係る構成を除き,本件発明の技術的範囲に属すると認められるのに対し,被告装置1及び5は本件発明の技術的範囲に属するとは認められないと判断することが相当である。』


 と判示されました。