●平成23(ワ)30214 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件「セ

 本日は、『平成23(ワ)30214 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件 特許権 民事訴訟「センサ付き省エネルギーランプ」平成25年12月19日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131220094204.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止請求権不存在確認等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、まず、均等の成否についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『イ 均等の成否について

(ア) 本件発明と原告製品とは,前記アのとおり,?構成要件Bにおいて,照度センサが,本件発明では「ソケットボディ10に備えられ」るのに対し,原告製品では回路支持板15の先端に設けられる点,?構成要件Cにおいて,本件発明では「点灯時間を調節するタイマー13」を有するのに対し,原告製品では点灯時間を照度センサ17が所定の暗度を感知して人感センサ16が人間の存在を感知した時から人感センサ16が人間の存在を感知しなくなって約5分が経過した時までとする,回路支持板15に設けられたマイクロコントローラ内に入力されたプログラムを有する点,?構成要件Eにおいて,本件発明では「タイマー13…の出力信号に基づ」いて点灯を制御するのに対し,原告製品ではマイクロコントローラに設定された点灯時間値に基づいて点灯を制御する点,?構成要件F3において,本件発明ではセンサ支持台32が「近い位置となるように…形成され」るのに対し,原告製品では回路支持板15がキャップ3の上端より低くなるように形成される点で異なる。

(イ) 特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等をする製品と異なる部分が存する場合であっても,?当該部分が特許発明の本質的部分ではなく,?当該部分を上記製品におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,?そのように置き換えることに,当業者が上記製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,?上記製品が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,?上記製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,上記製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である最高裁平成6年(オ)第1083号同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照)。


 そこで,以下,これについて検討する。


a ?の要件について

 特許権は,従来技術では達成し得なかった技術的課題を解決する手段を公開した代償として付与されるものであるから,このことを考慮すれば,特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,公開された明細書や出願関係書類の記載から把握される当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分をいうと解するのが相当である。


 証拠(甲2,20の7及び8)によれば,本件発明は,照度センサと点灯時間を調節するタイマーと赤外線センサとが光源としてのランプに一体に備えられるとともに,赤外線センサの感知範囲が最大化されて全体がコンパクトに構成された自動制御省エネルギーランプを提供するという従来技術では達成し得なかった技術的課題を解決するために,照度センサ12をソケットボディ10に備えさせて,点灯時間を調節するタイマー13を備えさせるとともに,赤外線センサ31については,複数のランプ30の間に介在され,それらの上下方向に沿って延設され,それらの高さよりも高くかつ近い位置となるように所定の長さで形成されてなるセンサ支持台32の端部に設けさせたものであり,これが本件発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分であると認められる。


そうすると,本件発明と原告製品との間において構成の異なる部分のうち,構成要件Bの照度センサ12がソケットボディ10に備えられるとの構成,構成要件Cの点灯時間を調節するタイマー13を有するとの構成,構成要件Eのタイマー13の出力信号に基づいて点灯を制御するとの構成及び構成要件F3のセンサ支持台32が近い位置となるように形成されるとの構成は,いずれも本件発明の本質的部分であるというべきである。


b ?の要件について

 前記の点をおくとしても,証拠(甲2)によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明が,点灯時間を調節するタイマー13の構成を有することにより,使用者が周囲に合わせて点灯時間を適当に設定して,無駄なエネルギー消費が防止され,電気エネルギーが節約されるなどの作用効果を有する旨記載されていること(段落【0001】【0006】【0020】【0022】)が認められるところ,構成要件Cの構成を「点灯時間を照度センサが所定の暗度を感知して人感センサが人間の存在を感知した時から人感センサが人間の存在を感知しなくなって約5分が経過した時までとする,回路支持板に設けられたマイクロコントローラに入力されたプログラム」に置き換えると,使用者が点灯時間を適当に設定することができないから,本件発明の目的を達することができず,同一の作用効果を奏しない。


 被告は,パソコンで点灯時間を変更するプログラムを作成して,パソコンと原告製品のマイクロコントローラをケーブルで接続し,このプログラムをダウンロードすることにより,点灯時間を調節することができるから,構成要件Cの「タイマー13」という構成を回路支持板15に設けられたマイクロコントローラ内に入力されたプログラムという構成に置き換えても,本件発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏すると主張する。


 しかしながら,上記プログラムにおいて点灯時間を調節するには,その都度,プログラムを別途作成する必要があるから,タイマーの操作と比較して,その容易さに大きな違いがあるのであって,同一の作用効果を奏するということはできない。被告の上記主張は,採用することができない。

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(ウ) したがって,原告製品は,本件発明の構成と均等なものということはできない。


ウ 以上によれば,原告製品は,本件発明の技術的範囲に属しないから,原告が原告製品を輸入し,又は販売する行為は,本件特許権を侵害しない。』


 と判示されました。