●平成21(ネ)10055 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権

 本日は、『平成21(ネ)10055 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟「携帯型コミュニケータおよびその使用方法」 平成22年03月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100330153747.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点2(構成要件gの均等の成否)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 中平健、裁判官 上田洋幸)は、

『2 争点2(構成要件gの均等の成否)について

 原告は,被告製品のCPUにより実行される処理が「選択手段」に該当しないとしても,同処理は,構成要件gの「選択手段」と均等である旨主張する。

 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。

(1) 置換可能性の有無について

 本件訂正発明は,従来技術において,無線電話装置と携帯型コンピュータとGPS利用者装置とをすべてを携帯することができず,かつ相互を組み合わせてそれらを複合した機能を得ることができないという課題を解決するために,それらを複合した機能を,実用的に得ることを目的としたものである。本件訂正発明は,上記の解決手段として,「携帯コミュニケータ」の「携帯コンピュータ」が,「位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段」によって,発信先番号の選択に係る処理を実行することとしたものである。

 これに対して,被告製品は,ナビタイムサーバがそのデータベースを用いて検索処理を実行するものであり,被告製品は,ナビタイムサーバに現在位置情報と施設カテゴリーの選択内容を送信することにより,ナビタイムサーバから検索結果として施設の情報を取得し,通信を行うものである。


 したがって,本件訂正発明における「携帯コンピュータ」が,「位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段」との構成を被告製品における上記処理手段に置換することは,解決課題及び解決原理が異なるから,置換可能性はないものというべきである。


(2) 本質的部分か否かについて

 乙5(前記第3,7(1)ア)によれば,自動車電話において,GPS装置を利用して現在位置に最も近い施設を検索して選択することは公知であると認められる。したがって,乙5の開示内容と対比するならば,本件訂正発明においては,構成要件gの「携帯コンピュータ」が「・・・上記位置座標データ入力手段の位置座標データに従って,所定の業務を行う複数の個人,会社あるいは官庁の中から現在位置に最も近いものの発信先番号を選択する選択手段」を有することが,本件訂正発明の本質的部分であるといえる。

 被告製品は,ナビタイムサーバが,ナビタイムサーバのデータベースを用いて検索処理を実行するものであって,上記の構成を具備しない点において相違する。被告製品における本件訂正発明との異なる構成部分は,本件訂正発明の本質的部分における相違であるというべきである。


(3) したがって,原告の均等に係る主張は,理由がない。


3 結論

 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。その他,原告は縷々主張するが,いずれも理由がない。よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。