●平成24(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権「回転歯ブラシの製

 本日は、『平成24(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「回転歯ブラシの製造方法及び製造装置」平成25年6月6日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130610095140.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、取消事由1(実施可能要件に係る判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 大鷹一郎、裁判官 齋藤巌)は、


『1取消事由1(実施可能要件に係る判断の誤り)について


 ・・・省略・・・


(2)実施可能要件について

 前記(1)イのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明2の製造装置の各構成について,図1及び図2を引用する実施例(段落【0013】ないし【0016】,【0018】ないし【0022】)において具体的な記載があること,本件発明1の製造方法における第1の工程ないし第4の工程について,図3ないし図9を引用する実施例(段落【0023】ないし【0033】)において具体的な記載があることからすると,本件明細書に接した当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて,本件発明1の製造方法を使用してブラシ単体を製造し,また,本件発明2の製造装置を製造し,かつ,使用することができ,さらには,本件各発明が均一な厚さのブラシ単体の量産化を可能とし,素線の重なりを少なくしたブラシ単体を高速度で効率良く製造することができる効果(前記(1)ウ?)を奏することを理解することができるものと認められる。


 したがって,本件各発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められるから,本件各発明に係る本件特許は,実施可能要件に適合するというべきである。


(3)原告の主張について


 原告は,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件各発明に含まれるものと想定される本件各具体例の構成について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず,本件特許は実施可能要件に違反するから,これと異なる本件審決の判断は誤りである旨主張する。


 しかしながら,原告の上記主張は,本件各発明の一部の構成について,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例とは異なる実施態様として本件各具体例が想定される旨を述べるものにすぎず,本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が本件各発明を実施することができること自体を否定するものでもない。


 したがって,本件審決における実施可能要件の判断の誤りをいう原告の主張は,理由がない。』

 と判示されました。