●平成24(行ケ)10362 審決取消請求事件 特許権「発光ダイオード」

 本日は、『平成24(行ケ)10362 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟発光ダイオード」平成25年6月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130628162655.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、特許無効審判の審決に対する取消しの訴えにおける審理範囲についての判断等が参考になるかと思います。

 
 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 田中芳樹、裁判官 荒井章光)は、


『1本件審決は,本件訂正前の特許請求の範囲請求項1ないし4の記載に基づいて各請求項に係る発明を認定し,これを前提に特許法29条2項,法36条4項及び同条6項1号の各規定に違反して特許されたものということはできないと判断して,各請求項に係る発明についての特許を無効とすることはできないとしたものであるが,本件審決の取消しを求める本件訴訟の係属中に,特許請求の範囲の減縮を含む本件訂正に係る審判が請求され,特許庁は本件訂正を認める審決をし,これが確定しているものである。


 そうすると,本件審決は,結果として,請求項1ないし4について判断の対象となるべき発明の要旨の認定を誤ったこととなり,この誤りが各請求項についての審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。


2この点,原告は,本件訂正前の本件発明は原出願の明細書には記載されていないため,本件出願は分割要件違反であり,本件訂正前の本件発明は原出願日ではなく本件出願日を基準に新規性を判断すべきこととなるが,そうすると,本件訂正前の本件発明は,原出願の公開公報に記載された発明であるから,特許法29条1項3号により新規性を欠き特許を受けることができないものであって,本件訂正は独立特許要件を充足しないとして,本件訂正審決は違法であり,本件訂正も違法であるから,本件訴訟は,違法な訂正審決を前提とすることなく,続行して審理すべきである旨主張する。


 しかしながら,特許無効審判の審決に対する取消しの訴えにおいてその判断の違法が争われる場合には,専ら当該審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべきものである。


 本件においては,前記第2の1のとおり,原告は,本件発明の請求項1について特許法29条2項の進歩性欠如並びに請求項1ないし4について法36条4項の実施可能要件違反及び同条6項1号のサポート要件違反を理由として,特許無効審判を請求し,無効審判手続においても,上記無効原因のみが現実に争われ,審理判断されたのであって,本件出願が原出願との関係で分割要件を充足するか及び本件特許が原出願の公開公報との関係で新規性を欠くかについては,本件審決の無効審判手続では何ら審理判断の対象とされていない以上,本件審決の取消しの訴えにおいて,これについて裁判所の判断を求めることはできない。


 したがって,原告の上記主張は採用することができない。


3結論

 よって,本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。