●平成23(ワ)28301 違約金請求事件 特許権「法面の加工方法および

 本日も、『平成23(ワ)28301 違約金請求事件 特許権 民事訴訟「法面の加工方法および法面の加工機械」平成25年04月25日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130509131408.pdf)について取り上げます。


 本件では、 争点4(本件和解が公序良俗に反し無効であるか否か)および 争点5(本件違約金条項に基づく違約金の請求が権利の濫用に当たるか否か)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『4 争点4(本件和解が公序良俗に反し無効であるか否か)について

(1) 被告は,本件和解の「原告特許権」が本件特許権を指すことを前提に,本件和解は,平成22年9月12日に存続期間が満了した本件特許権の消滅後も被告にその実施料の支払義務があることを定めたものであるから,不公正な取引方法に該当し,自由競争秩序に反すると主張する。


 しかしながら,本件特許は方法の特許であるのに,本件和解1項には,原告が権利を有する特許権を侵害する物件を製造した事実を被告が認めて謝罪するというように,物の特許を前提とする記載があり,本件和解2項2号にも,「別紙方法目録記載の方法を用いた工事その他原告が権利を有する特許権に抵触する工事」と本件特許権に限定せず,むしろ他の特許権があることを前提とする記載があること,前記前提事実に,証拠(甲7,乙11,原被告各代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば,被告代表者及び被告訴訟代理人は,本件和解以前から,本件特許権以外にも関連する特許権が存在する可能性があることを認識していて,まず,原告代表者と被告代表者が直接面会して和解内容について話し合い,さらに,それぞれの訴訟代理人を通じて条項案のやりとりをするなどした上で,平成22年6月8日,本件和解が成立したことが認められることなどの事情を併せ考えると,本件和解の「原告特許権」が本件特許権に限られるものではないというべきである。被告の上記主張は,その前提を欠くものであって,採用することはできない。


(2) 被告は,本件違約金条項は,軽微な違反行為に対する制裁として,その後の一切の工事についての工事代金全額を違約金として支払わせるものであるから,暴利行為に当たると主張する。本件違約金条項は,合意に違反した事実が生じた時以降のあらゆる工事について被告が受ける工事代金に相当する額を違約金と定めたものである(このことは,当事者間に争いがない。)。


 しかしながら,本件違約金条項は,被告による和解内容の履行を担保し,かつ,被告による特許権侵害の事実の立証負担の軽減を図るべく,賠償額の予定を定めたものであって,このことに合理性があるということができる。そして,原告は,本件工事に関し,被告が報告をしなかったことを理由に本件工事代金に相当する額の違約金の支払を求めているのであって,少なくともその限度においては,違約金の額が著しく過大であるとまでは認められない。


 そうであるから,本件違約金条項に基づく違約金の支払が暴利行為に当たるということはできず,他に暴利行為であることを基礎付けるに足りる事情は本件全証拠によっても見出すことができない。被告の上記主張も,採用することができない。


5 争点5(本件違約金条項に基づく違約金の請求が権利の濫用に当たるか否か)について

 被告は,原告が,被告を倒産させることをもくろんで,例えば,美杉町災害現場の工事において受注を妨害するなど,被告に報告義務を課しておきながら,被告が報告することができないようにしているから,権利の濫用に当たると主張をする。しかしながら,被告がその主張の裏付けとして提出するのは被告が作成した上記工事の見積書2通(乙7の1・2)であり,上記主張に沿う被告代表者の供述を考慮しても,これらをもって,原告が被告を倒産させることをもくろんだとか,被告の受注を妨害したと認めることはできず,他に権利の濫用に当たることを窺わせるような事情も認められない。被告の上記主張は,採用することができない。


6 なお,被告は,原告が,本件和解において,「原告が権利を有する特許権」が全て消滅するまで本件和解の効力を存続させることを意図したのであれば,被告に対し,本件和解に先立ち,被告がその存続期間を認識するに足りる情報を提供すべきであったのに,これをしなかったのであるから,本件特許権以外の特許権をもって被告に対抗することができず,本件特許権の消滅後は本件和解の効力を主張することができないと主張する。


 しかしながら,仮に原告に上記情報を提供すべき義務があったとしても,これを怠ったことによって,本件特許権以外の特許権を被告に対抗することができなくなるというわけではないし,原告が上記のような義務を負うことを基礎付ける事情は何ら見当たらないから,被告の上記主張は,失当というほかない。


7 以上によれば,被告は,原告に対し,違約金1169万5200円を支払う義務があるところ,違約金支払債務は,期限の定めのない債務であって,請求により遅滞に陥るから,これについて遅延損害金が発生するのは,訴状の送達により被告に請求した日の翌日であることが記録上明らかな平成23年3月31日である。したがって,原告の請求は,違約金請求のうち,違約金1169万5200円及びこれに対する平成23年3月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がなく,被告各機械の運搬請求は,理由がない。


 よって,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。