●平成20(ワ)8049 損害賠償請求事件 特許権「床用目地装置」

 本日は、『平成20(ワ)8049 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟「床用目地装置」平成20年11月27日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081202133354.pdf)について取上げます。


 本件は、特許権に基づく損害賠償請求事件で、その一部の請求が認容された事案です。


 本件では、損害賠償額の算定が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 平田直人、裁判官 柵木澄子)は、


『原告は,被告が本件EXPジョイント工事で受けた利益は300万円を下らないから,被告の不法行為によって原告の被った損害の額も300万円を下らないものと推定される(特許法102条2項)と主張する。


 しかしながら,本件EXPジョイント工事による被告の利益が300万円を下らないことを証する証拠はなく,前記1(2)のとおり,本件金物工事全体の利益額でも7万3377円にとどまるものと認められる。


 また,原告は,床,天井,壁等のEXPジョイントの工事が「金物工事」として一括して発注される関係にあり,床に特許製品であるEXPジョイントを使用しなければ目的を達することができず,金物工事を一括して受注することができなかったから,本件特許権の侵害が問題となっている本件EXPジョイント(床EXPジョイント)工事の単価ではなく,本件金物工事全体の価格を基礎に算定すべきであると主張する。


 しかしながら,床に特許製品であるEXPジョイントを使用しなければ目的を達することができないというためには,床のEXPジョイント工事を実施するには必ず特許製品を用いなければならず,他に方法がないといえなければならない。本件において,このような事実を認めるに足る主張立証はないから,本件特許権に係る製品を使用しなければ,本件金物工事を一括して受注することができなかったということはできず,本件金物工事全体の価格を算定の基礎とする根拠はないというべきである。


 なお,このことは,特許法102条2項の推定としてではなく,相当因果関係の問題としてとらえても,同様であり,損害額の算定の基礎を本件金物工事全体の価格にまで広げるべき相当性はないものというほかない。


 そうすると,原告の損害については,被告の主張するとおり,本件EXPジョイント工事部分の代金額を基礎として,特許法102条3項に基づき算定するのが相当である。そして,弁論の全趣旨によれば,本件特許権につき第三者に対して実施許諾がされる場合,その実施料率を3パーセントとみるのが相当であると認められる。


 したがって,原告の損害は,本件EXPジョイント工事部分の代金217万8800円に3パーセントを乗じた6万5364円であるものと認めるのが相当である。


3 結論

 以上によれば,原告の請求は,上記の限度で理由があるから認容し,その余の請求は,理由がないので,棄却することとする。


 よって,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。