●平成20(行ケ)10224 審決取消請求事件 商標権「NEXTEX」

 本日は、『平成20(行ケ)10224 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「NEXTEX」平成20年11月19日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081119161152.pdf)について取上げます。


 本件は、商標法50条1項に基づく商標登録の不使用取消審判の棄却審決の取消しを求め、棄却された事案です。


 本件では、パソコン画面上に表された名刺原稿に基づいて作成された名刺や封筒の存在等により登録商標の使用の事実が認定された点で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 石原直樹、裁判官 杜下弘記)は、


『1 取消事由1(名刺及び封筒の存在並びに使用の事実についての認定の誤り)について


(1) 原告は,審決が,甲第26号証に係るパソコン画面上に表された名刺原稿に基づいて作成された名刺及び甲第27号証添付に係る封筒の存在並びに被告による使用の事実を認定したことは誤りであると主張するので,この点について検討する。


(2) 名刺及び封筒の存在


 ・・・省略・・・


(3) 名刺及び封筒の使用

ア 被告による契約締結等

(ア) 甲第13号証によると,被告は,広島市所在の某株式会社との間において,平成17年1月1日,同社若しくは同社の関連会社の事業あるいは計画策定の円滑,かつ,戦略的な推進のため,又は,同社の指定による同社の役員,株主及び従業員に係る事案処理のため,相談,監修,交渉代理,専門家(法律,財務会計知財産権その他)の手配その他の支援業務を行うことを内容とする顧問契約を締結したことが認められる。


(イ) 甲第15号証によると,被告は,中国在の某有限公司から,同有限公司の商品の日本企業又は日系企業に対する告知活動,販売促進活動,販売代理活動の依頼を受け,その旨の平成17年5月15日付けの委任状の交付を受けたことが認められる。


(ウ) 甲第21号証によると,被告は,某株式会社との間において,平成19年1月16日,別の会社を100%子会社化するための交渉戦略の検討及び報告に関する委託調査を内容とする委託契約を締結したことが認められる。


イ上記アにおいて認定したところによると,被告は,本件審判請求の登録前の3年以内に「法人の経営管理又は事業運営の代理又は代行」(上記ア(ア)),「商品の販売に関する情報の提供」(同(イ))及び「法人の設立又は廃止及び法人の提携・合併又は買収に関する助言・仲介・斡旋又は契約の代理・媒介」(同(ウ))の範疇に属する業務を行っていたことが認められるところ,これら被告の業務の少なくとも一部の遂行の過程において,被告代表者が甲第3若しくは第26号証又は乙第1号証の1,第2号証の1若しくは第3号証の1に係る名刺を使用して営業活動を行ったことを推認することができるほか,契約の相手方に対して関係書類を送付し,又は担当者等が持参して交付する際に,甲第27号証添付に係る封筒を使用したことを推認することができる。


(4) 以上によると,審決が,甲第26号証の名刺原稿に係る名刺及び甲第27号証添付に係る封筒の存在を前提として,被告によるこれらの使用の事実を認定したことに誤りはないというべきであるから,取消事由1は理由がない。


2 取消事由2(表示についての認定判断の誤り)について

(1) 原告は,被告の商号は「ネクステックス・コンサルティング株式会社」であり,「nextex consulting co.,ltd.」は,被告の商号の英文表記であるから,一連のものとして把握されるべきであって,このうち「nextex」の文字部分だけが看者の注意をひくものであるとも,この部分が他の文字から独立して把握認識されるものであるともいえないから,名刺及び封筒の記載から「nextex」の文字部分のみを取り出して,本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用を認定した審決の判断は誤りであると主張するので,検討する。


(2) 上記1(2)のとおり,甲第26号証に係る名刺及び甲第27号証添付に係る封筒には,いずれも「ネクステックス・コンサルティング株式会社」の表示とは別に「nextex」,「consulting co.,ltd.」の上下二段の英文表示があり,上段の「nextex」の部分が下段の「consulting co.,ltd.」に比して明らかに大きく記載されているほか,上段の記載の末尾には登録商標を意味する「○R」の記号が記載されているものであるから,英文表示中の「nextex」の部分は他の記載部分と明りょうに区別して認識され得るものと認められる。


 そして,上記の「nextex」の部分は,本件商標(「NEXTEX」)と字体が異なるだけであって社会通念上同一の商標と認められることは明らかである。


 さらに,上記1(3)イで認定したところを併せ考慮すると,被告が取消しを求める指定役務のうち「法人の設立又は廃止及び法人の提携・合併又は買収に関する助言・仲介・斡旋又は契約の代理・媒介,法人の経営管理又は事業運営の代理又は代行,商品の販売に関する情報の提供」に係る業務の遂行の過程において,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる「nextex」を使用したことを認定することができる。


(3) 以上によると,商標権者である被告が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したと認定した審決の判断は正当であり,取消事由2は理由がない。


第6 結論

 以上のとおり,取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却するべきである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。