●平成13(ワ)1057 不正競争 民事訴訟「携帯電話機用アンテナ事件」

 本日は、『平成13(ワ)1057 不正競争 民事訴訟「携帯電話機用アンテナ事件」平成14年07月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/1EB1F87A6A407E6449256C4400256D6E.pdf)について取り上げます。


 本件は,被告が第三者から供給を受けて販売する携帯電話機用のアンテナは,原告の製造販売に係るアンテナの形態を模倣した商品であると原告が被告に対し,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為を理由として損害賠償を求め、棄却された事案です。


 本件では、携帯電話機用のアンテナを輸入・販売する原告が、不正競争防止法2条1項3号に基づく損害賠償請求の請求主体となり得ない、と判示した点で参考になる事案です。


 つまり、東京地裁(民事第46部 三村量一 裁判長裁判官)は、

『(4) 不正競争防止法2条1項3号の趣旨等について


  不正競争防止法2条1項3号の趣旨につき考察するに,他人が資金・労力を投下して開発・商品化した商品の形態について,他に選択肢があるにもかかわらずことさらこれを模倣して自らの商品として市場に置くことは,先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって,競争上不公正な行為と評価されるべきものであり,また,このような行為により模倣者が商品形態開発のための費用・労力を要することなく先行者と市場において競合することを許容するときは,新商品の開発に対する社会的意欲を減殺することとなる。このような観点から,模倣者の上記のような行為を不正競争として規制することによって,先行者の開発利益を模倣者から保護することとしたのが,同規定の趣旨と解するのが相当である。


 これによれば,不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為につき差止めないし損害賠償を請求することができる者は,形態模倣の対象とされた商品を自ら開発・商品化して市場に置いた者に限られるというべきである。


  本件においては,前記認定のとおり,原告はシンタクが開発製造した2段折れのアンテナを購入した台湾のハオチャンからこれを輸入し,日本で販売したにすぎないから,原告は自ら原告商品を開発し,商品化して市場に置いた者ということができない。


  なお,前記のとおり,本件においては,2段折れアンテナを携帯電話機用のアンテナとして用いるという発想自体については,Aが独自に着想して,その具体的形状につきハオチャンに問い合わせないし相談をしたという可能性も存在するが,不正競争防止法2条1項3号は単なるアイデアを保護の対象とするものではないから,仮にA自身がそのような発想を得たものであるとしても,原告はこれを商品の形態として具体化するための労力,時間や資本を投下しておらず,原告商品の具体的形状がシンタクが先行して製造販売していた製品に由来するものである以上,原告が同号に基づく請求の主体となり得るということはできない。


 したがって,原告は,原告商品に関して,不正競争防止法2条1項3号に基づいて損害賠償を請求することができないというべきである。


2 結論

  以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由がない。


 よって,主文のとおり判決する。 』


と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸1;<新たに出された知財判決>

●『平成18(行ケ)10321 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「流体システム内の流れの方向を変更する方法」平成19年10月16日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071016164649.pdf
●『平成18(行ケ)10320 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「蒸気圧縮冷凍システムおよび変更弁」平成19年10月16日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071016163651.pdf
●『平成19(行ケ)10011 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「 置棚」平成19年10月16日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071016151420.pdf


 追伸1;<気になった記事>

●『船井電機Polaroidなど14社に米国輸入禁止申し立て 』http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20071016/funai.htm
●『船井電機 米でTV特許侵害申し立て』http://www.sponichi.co.jp/society/flash/KFullFlash20071016041.html
●『Red HatNovell特許権侵害で提訴される』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/16/news015.html
●『Red HatNovellLinuxを標的にした特許侵害訴訟に直面』http://opentechpress.jp/news/07/10/16/0346249.shtml
●『米英で特許訴訟件数が増加、米法律事務所が調査(Fulbright & Jaworski)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2040
●『オリンパスMicrosoft、広範な特許クロスライセンス契約を締結』http://www.nikkeibp.co.jp/news/it07q4/548388/
●『オリンパスMicrosoft、クロスライセンス契約を締結』http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=172633&lindID=1
●『トランスジェニック、遺伝子改変に関する特許技術を仏社から取得(トランスジェニック)』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=2036