●平成18(ワ)14144 意匠権侵害差止等請求事件「カーテンランナー」

  昨日は、H氏の紹介で、H氏、H氏の奥様、メーカー勤務のT氏とM女史、法律事務所のY弁護士、特許事務所のT弁理士と都内某所で飲みました。

 知財の話(裏話?)等で盛り上り、とても楽しかったです♪。


厚く御礼申し上げます。


 さて、本日は、『平成18(ワ)14144 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「カーテンランナー」平成19年12月11日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213122332.pdf)について取り上げます。



 本件は、意匠権の侵害と、不正競争防止法2条1項1号,3号違反により差止め等を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、不正競争防止法2条1項1号の商品等表示の判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官田中俊次、裁判官高松宏之、裁判官西理香)は、


2 争点(2)ア(原告商品1ないし3の形態の周知商品等表示性)について

 …省略…

(2) 商品の形態は,商標等と異なり,本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが,商品の形態が同種商品とは異なる独自の特徴を有しており,その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用されたり,短期間であっても強力な宣伝広告がなされたり,大きな販売実績が上がる等の事情により,需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になる場合があり,そのような場合には,商品の形態も不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示…として需要者の間に広く認識されているもの」に該当するものと解される。以下,この観点から検討する。


ア(ア) まず原告商品1ないし3の形態のうちランナー部及び支軸部の形態は,従来から販売されていたステージランナーやニューステージランナーA及びBにも備わっていたもので,ありふれた形態であるといえる。また,原告商品1ないし3のフック部の形態は,従来から「カラビナ」としてよく知られている連結具の形態である。このように原告商品1ないし3の形態は,カーテンランナーとしてありふれたランナー部及び支軸部の形態に,連結具として周知のカラビナの形態を組み合わせたものである。


(イ) ところで,原告商品1ないし3のようなランナー部とフック部とを組み合わせたカーテンランナーは,原告商品1が発売される前には存在しなかったのであり,このことからすると,原告商品1ないし3の形態は,ランナー部とフック部とを組み合わせた基本的形態を備える点において,従来のカーテンランナーにはない新規な形態的特徴を有している
といえる。


 しかしながら,このようにランナー部とフック部とを組み合わせた基本的形態とすることは,カーテンランナーが,カーテンをカーテンレールにS字状フックを用いることなくワンタッチで装着できるという機能や効用を有するものとするために不可避的な形態であるといえる。


 そして,このように同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態をもって不正競争防止法2条1項1号の周知な商品表示とする場合には,同号が保護の目的とする出所表示機能の保護を超えて,当該種類の商品の機能や効用を独占することを認めることとなるから,そのような同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避の形態については,同号にいう「商品等表示」に該当しないと解するべきである。


 そうすると,本件においては,原告商品1ないし3の形態のうちランナー部とフック部とを組み合わせた基本的形態を備える点は,上記の説示にかかわらず,同号の「商品等表示」たり得ないものというべきであり,原告商品1ないし3の形態が周知な商品等表示といえるか否かは,ランナー部,支軸部及びフック部のそれぞれの具体的形態及びそれらを組み合わせた具体的形態について検討する必要がある。


(ウ) 上記の観点からすると,原告商品1ないし3の形態のうち,ランナー部及び支軸部の具体的形態は,従前から存したありふれた形態であるが,フック部の形態は,種々考えられる中から連結具として周知のカラビナの形態をほぼそのまま流用した点において,なお同種の商品の機能や効用を発揮するために不可避的とはいえない独自の形態的特徴を有すると認められるから,この点において,原告商品1ないし3の形態が,全体として商品等表示性をおよそ認めることができない形態であるとはいえない。


イ しかし,このような原告商品1ないし3は,その発売以降,原告のカタログに継続して掲載されているが,同じカタログには他の複数のカーテンランナーも掲載され,発売当初のカタログを除き,その中で特に原告商品1ないし3のみが大きく取り上げられているということも見られない。また,原告商品1ないし3が業界紙に記事として取り上げられたのも,特許を取得したことを除けば発売当初の各1回のみであり,原告は同業界紙に毎号広告を掲載しているが,それらにおいては他の原告の商品も同時に広告の対象とされており,特に原告商品1ないし3が大々的に対象となっているものはなく,中には原告商品1ないし3が対象とされていないものも見られる。


 さらに,原告商品1及び2が発売された平成15年11月から11か月後の平成16年10月ころには,被告が同じくランナー部とフック部とを組み合わせたワンタッチタイプのイ号ないしハ号製品を発売しており,原告と被告とが国内のカーテンランナー業界において2社で大きなシェアを有することからすると,被告のイ号ないしハ号製品の販売後は,単にランナー部とフック部とを組み合わせたワンタッチタイプのカーテンランナーというだけでは,原告の商品と被告の商品とを区別することは難しい状況になったといえる。


 そして,被告がイ号ないしハ号製品を発売するまでの間に,原告商品1ないし3がどれほどの売れ行きを見せ,また需要者の注目を集めたのかについては,これを認定できるだけの証拠が存しない。


ウ 以上からすると,原告商品1ないし3は,その基本的形態には商品等表示性を認めることができないものであり,加えて特段の強力な宣伝広告がなされたともいえず,その販売量も明らかでないのであるから,カーテンランナーの需要者がカーテン工事業者という専門業者であることを踏まえても,原告商品1ないし3の形態が,被告のイ号ないしハ号製品が発売されるまでの間に,原告の出所を表示するものとして需要者の間に周知なものとなったとは認めることができず,イ号ないしハ号製品の発売から現在までの間に周知性を獲得したとも認められない。


 したがって,原告商品1ないし3の形態は,不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示…として需要者の間に広く認識されているもの」に該当しないから,すでにこの点において同号違反を理由とする原告の請求は理由がない。

 …省略…

4 争点(3)(模倣性)について

 先に争点(1)ア及び争点(2)イについて述べたところからして,イ号ないしハ号製品の形態は,原告商品1ないし3の形態と実質的に同一とはいえないことが明らかであるから,不正競争防止法2条1項3号違反を理由とする原告の請求は理由がない。


5 まとめ

 以上によれば,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<新たに出された知財判決>

●『平成19(行ケ)10169 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「個々に包装される使い捨て吸収性物品用の再固定可能な接着ファスナシステム」平成19年12月13日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071214102434.pdf
●『平成18(行ケ)10363 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「弾性側パネルを有する吸収体物品」平成19年12月13日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071214101147.pdf
●『平成18(ワ)8621 商標権侵害差止等請求事件 商標権 民事訴訟「マイクロクロス」平成19年12月13日 大阪地方裁判所』(認容判決http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213154152.pdf
●『平成18(行ケ)10414 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「家庭のちりのダニ・アレルゲン,Der pIII をコードしている核酸,およびそれらの使用」平成19年12月12日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213135352.pdf
●『平成18(行ケ)10412 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「磁気テープ装置」平成19年12月11日 知的財産高等裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213113606.pdf
●『平成18(ワ)14144 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「カーテンランナー」平成19年12月11日 大阪地方裁判所』(棄却判決)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071213122332.pdf