●「人工乳首事件」について(3)

 さらに、今回の国内優先は、実施例補充型であるから、追加した実施形態が先の発明の概念に含まれる以上、たとえ、新規事項追加に該当しても、優先権を認めないのは妥当でない、という見解もあるようです。


 しかし、この見解は、国内優先権制度採用時の昭和62年から平成5年12月末まで(多少あやしいです)の、要旨変更に該当しない限り新規事項の追加も補正により認められる時代の話ではないでしょうか?おそらく本事件の後の出願の螺旋状の追加は、要旨変更の時代であれば、補正で追加できる範囲であるので、優先権の効果が認められていたと思います。


 でも平成6年1月1日以降は、補正により追加可能か否かの基準は、新規事項の概念に変わったので、追加した実施形態が先の発明の概念に含まれていても、新規事項追加に該当すれば、補正により追加も認められないので、優先権の効果は認められない、で良いのではないでしょうか。


 ともかく、判例を勉強していくのは、実務上、役に立ちますし、重要ですね。


 昨年は、本事件以外にも、「アイスクリーム充填苺」事件等の実務に役立つ判決が出ていますので、この日記でも、少しずつ判例を紹介していきたいと考えます。