●弁理士会研修「優先権制度に関する最近の判決事例とその利用方法」

 今日(4/18)は、午後から弁理士会会員研修の「優先権制度に関する最近の判決事例とその利用方法 -人工乳首事件の影響- 」を受講してきました。会場は、弁理士会館隣のいつもの灘尾ホールです。


 人工乳首事件である『平成14(行ケ)539 特許権 行政訴訟 平成15年10月08日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/B4552D013DAF2C6449256E2F0024C479.pdf)は、もう3年以上も前の事案ですが、実務上利用が多い国内優先権制度に関する制度であるためか、結構、受講者が多いように思いました。


 今回は、人工乳首事件がメインの説明でしたが、パリ優先等の同一性の話等もあり、とても参考になりました。


 人工乳首事件については、以前にこの日記でも取上げたことがあるので、詳細には、コメントしませんが、基礎出願と国内優先出願のクレームは同じでも、実施例(図11に示す螺旋形状)を追加した国内優先出願を行った場合、出願当初明細書から超える部分については、優先権の効果が認められなかった事案です。詳細は、判決文のこちら『平成14(行ケ)539  特許権 行政訴訟 平成15年10月08日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/B4552D013DAF2C6449256E2F0024C479.pdf)を参照して下さい。


 一方、人工乳首事件とは逆に、実施例(フィルムの巻き込みや、巻き上げ等の周知手段)を追加した国内優先出願を行い優先権の効果が認められた事案として、レンズ付きフィルム事件である『平成16(ネ)1563  特許権 民事訴訟 平成17年01月25日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/431A112782ED2526492570FC0002229A.pdf)の紹介もありました。


 なお、個人的には、平成6年法改正により補正における新規事項の追加の制限が加わった以降の出願は、補正とのバランスを考え、国内優先の効果が認められる範囲は、審査基準と同じ考え方で、補正による新規事項の追加の例と同様に、追加部分が新規事項追加と判断されない場合は、国内優先の効果が認められのに対し、追加部分が新規事項の追加と判断される場合は、国内優先の効果が認められないものと考えているので、人工乳首事件の判断に賛成しています。


 一方、平成6年法改正前の出願であれば、補正は発明の要旨を変更しない範囲で認められていましたので、人工乳首事件の出願も平成6年法改正前であれば、もしかするといわゆる実施例補充型として国内優先の効果が認められていたかも、と考えます。



 ともかく、講師も言っていましたが、国内優先が認められるか否かは個々のケースや担当する裁判官等により変わる可能性があるので、出願当初からできる範囲でバリエーションを多くした実施例を明細書に記載しておくのが最も重要なことであると思います。


 そうすれば、『人工乳首事件』も、また本件とは関係ありませんがサポート要件について判示した知財高裁代合議事件の『偏光フィルム事件』も、公開の代償として特許を付与するとする特許法第1条の法目的の基本原則の下、当初明細書に開示した範囲でクレーム化して特許を求める限りは、決して不利な取扱いを受けないのではと考えます。


 なお、本講義において、優先権とは関係はないが、知財高裁平成18年9月28日判決の事件(※判決日だけテキストに記載されていませんでしたが、おそらく『平成18(ネ)10007 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成18年09月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060929110516.pdf)ではないかと思います。)が結構、話題になっていると言われていましたので、明日以降、こちらの事件についてコメントしたいと思います。


追伸1;<気になった記事>

●『「自由貿易協定(FTA)と知的財産権」』
http://www.21coe-win-cls.org/rclip/activity/index34.html
●『後発医薬品の保険承認、年2回に・厚労省提案』http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070418AT3S1800D18042007.html
●『米ボネージ、特許侵害めぐる訴訟で破産に追い込まれる可能性』http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000062-reu-bus_all
●『米ボネージ、特許侵害めぐる訴訟で破産に追い込まれる可能性』http://www.thinkit.co.jp/free/news/reuters/0704/18/22.html
●『対価は3700万円 ラベルライター発明訴訟』http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007041801000551.html
●『職務発明の対価3700万円 ブラザーに支払い命じる』http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY200704180309.html
●『ラベル発明対価3700万円、開発者勝訴』http://news.tbs.co.jp/top_news/top_news3543003.html
●『中国の知財保護分野における国際協力が強化される』http://www.pekinshuho.com/liangui/txt/2007-04/18/content_61950.htm
●『「製品ベースでデジタル家電のパテントプールをつくりました」』http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20070416/122879/
●『「テプラ」発明対価、ブラザー社員ら2人に3700万円』http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070418ic22.htm
●『IPO が2006 年米国特許取得企業トップ300 を発表〜ランキング公表を継続するも、質の評価指標を検討中と表明〜』http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/070416.pdf
●『強制特許実施権が製薬メガファーマを潰す日』http://www.ohmynews.co.jp/news/20070417/10219



追伸2;<新たに出された知財判決>

●『平成18(ネ)10036 著作権差止等・著作権損害賠償請求控訴事件 著作権 民事訴訟キース・へリングの創作物」 平成19年04月05日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070418105855.pdf