●「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準の改訂について

 本日、弁理士会から「「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準の改訂について」のメールが送られてきました。


 特許庁のHPの「「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の審査基準の改訂について」(http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/kisaiyoken_shinsa_kaitei.htm)に掲載されており、そこの「1 審査基準改訂の基本方針」には、

・厳しすぎる判断や判断のばらつきを是正するため、説明が不十分な箇所の記載の補足、明確化のための改訂を行う。

・記載要件の審査基準が要件ごとに異なる時期に改訂されてきたために生じていた各要件間での不整合について、整合を図る観点での改訂を行う。

と記載されています。


 また、「2 審査基準改訂のポイント」として、次のことが記載されています。

○第36条第6項第1号

判断手法は現状どおりとし、以下の観点で、審査基準の記載を補足、明確化しました。

(1)判断手法について、以下の事項を記載しました。

・「発明の課題」は、原則、発明の詳細な説明の記載から把握すること

・「発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」は、明細書及び図面のすべての記載事項に加え、出願時の技術常識を考慮して把握すること

・発明の課題と無関係に違反の類型(3)(「出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合。」)を適用すべきでないこと

・物の有する機能・特性等と、その物の構造との関係を理解することが困難な技術分野(例:化学物質)に比べて、それらの関係を理解することが比較的容易な技術分野(例:機械、電気)では、発明の詳細な説明に記載された具体例から拡張ないし一般化できる範囲は広くなる傾向があること

・発明の詳細な説明に記載された特定の具体例にとらわれて、必要以上に特許請求の範囲の減縮を求めるべきでないこと


(2)審査官が拒絶理由通知に記載すべき内容として、以下の事項を記載しました。

(イ)違反の類型(3)(「出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合。」)の拒絶理由通知について

・審査官は、判断の根拠(発明の詳細な説明の記載箇所及び技術常識の内容等)を示しつつ、本違反類型に該当すると考える理由を具体的に説明すること

(ロ)違反の類型(4)(「請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することとなる場合。」)の拒絶理由通知について

・審査官は、自らが認定した発明の課題及び課題を解決するための手段を示しつつ、本違反類型に該当すると考える理由を具体的に説明すること

(3)拒絶理由通知に対する出願人の対応(実験成績証明書の参酌等)に関して、以下の事項を記載しました。

・例えば、審査官が判断の際に特に考慮したものとは異なる技術常識等を示しつつ、第36条第6項第1号の要件を満たす旨を意見書において主張できること

・実験成績証明書により、意見書の主張を裏付けることができること

・発明の詳細な説明の記載が不足しているために、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない場合には、出願後に実験成績証明書を提出して、発明の詳細な説明の記載不足を補うことによって、請求項に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できると主張したとしても、拒絶理由は解消しないこと


○第36条第6項第2号

基本的な考え方は現状どおりとし、その考え方を明確化するとともに、以下の(2)の場合について、第36条第6項第1号の要件等の他の要件との整合性を考慮しつつ、基本的な考え方に沿った説明となるように整理しました。

(1)「発明の範囲が明確である」ことについて、以下の説明を補足して明確化しました。

・「発明の範囲が明確である」とは、「具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを理解できるように記載されている」という意味であること


(2)以下の場合について説明を整理しました。

(イ)発明を特定するための事項の技術的意味が理解できない場合

・「発明を特定するための事項の技術的意味とは、発明を特定するための事項が、請求項に係る発明において果たす働きや役割のことを意味」することを記載し、「技術的意味」を定義しました。

・タイトルを、「発明を特定するための事項の技術的意味が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明を特定するための事項が不足していることが明らかである場合。」へと変更しました。

・「技術的意味」を定義したことに伴い、本類型の範囲外となった部分に対応するため、「明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、請求項中の用語の意味内容を理解できない結果、発明が不明確となる場合。」 との違反類型を追加しました。

(ロ)請求項が機能・特性等による表現を含む場合、請求項が製造方法によって生産物を特定しようとする表現を含む場合

・請求項が機能・特性等による表現又は製造方法によって生産物を特定しようとする表現を含む場合を「第36条第6項第2号違反の類型」から独立した項目に移動し、特に留意が必要な点や、第36条第6項2号違反となる典型的な例について記載しました。

・これらの場合においても、他の場合と同様、第36条第6項第2号の審査における基本的な考え方に基づいて審査される旨を記載しました。

○第36条第4項第1号

審査官が拒絶理由通知に記載すべき内容及び拒絶理由通知に対する出願人の対応(実験成績証明書の参酌等)に関して、それぞれ、上記第36条第6項第1号の (2)?、(3)に記載した内容と同趣旨の内容を記載しました。