●平成18(行ケ)10520 審決取消請求事件 商標権「Indian Motorcycle」

  受験生の皆様、明日はいよいよ本番です。今日は、早目に寝て睡眠をしっかりとり早起きして、弁理士一次試験に臨んでください!

  さて、本日は、『平成18(行ケ)10520 審決取消請求事件 商標権「Indian Motorcycle」平成19年05月17日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070518160858.pdf)について取上げます。


 本件は、商標登録無効審判の請求をしたところ,請求は成り立たないとの審決がされたため,同審決の取消しを求めた事案で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、知財高裁も、被告の本件登録商標「Indian Motorcycle」と原告の引用登録商標「INDIAN インディアン」とは非類似で、商標法4条1項11号違反の無効理由は認めなかったようですが、本判決文最後の「また,審決は,引用商標との対比において(すなわち,引用商標を商標法4条1項11号の「他人の登録商標」として),本件商標が同号に該当する商標であるか否かについて審理判断したものであり,当該審決の取消しを求める本件訴訟において,引用商標以外の商標との関係における類似性や,商品の出所の誤認混同等を,審決の取消事由として審理の対象とし得ないことはいうまでもない。」との判示事項や、原告の名称が「株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン」であって、本件商標からは「インディアンモーターサイクル」の称呼が生ずると判断している点等を考慮すると、無効審判時に4条1項8号や、同15号等の無効理由を主張していたら、もしかすると別の結果が出ていたかも?と思いました。



 つまり、知財高裁は(第4部 塚原朋一 裁判長)は、


『1 取消事由(類否判断の誤り)について

(1) 本件商標は,全体が,黒塗りで横長の長方形状の図形より成り,当該長方形状の図形の内側の外周辺近くに,その各辺に沿った,白抜きステッチより成る直線によって,横長の長方形を描き,当該白抜きステッチより成る長方形の内側に,上下左右に多少の余裕を残して, 白抜きの欧文字により「Indian」の文字と「Motorcycle」の文字とを2段に書して成るものであり,当該両文字は,共に筆記体風の特徴のある同一の書体で構成され,各文字列の横幅をほぼ同じくし,前後を揃えて2段に配されており,また,それぞれの語頭の「I」と「M」の各文字は一部交差し,「Motorcycle」の文字に係る「t」の文字の上部の横棒が右側に長く伸ばされたものである。


 他方,引用商標は,ゴシック体風の特徴のない活字体で「INDIAN」の欧文字と「インディアン」の片仮名文字とを2段に書して成るものであり当該両文字は各文字列の横幅を同じくし,前後を揃えて2段に配されているものである。


(2) 本件商標が,いわゆる結合商標であることは,当事者間に争いがないところ,上記(1)の認定に係る構成に基づいて検討する「Indian」との文字と「Motorcycle」の文字とは,2段に表示されたものであるが,共に,特徴のある同一の書体より成り(「Motorcycle」の文字に係る「t」の文字の上部の横棒が右側に長く伸ばされている点は,書体の特徴を強調するものといえる。),両文字が,いずれも白抜き文字であって,各文字列の横幅をほぼ同じくし,前後を揃えてあるほか,それぞれの語頭の「I」と「T」の各文字が交差している点は,いずれも両文字の一体感又は統 一感を強く感じさせるものである。のみならず,本件商標においては両文字とも白抜きのステッチで描かれた長方形の内部に,上下左右に多少の余裕を残して配されているところ,このように,結合商標の文字部分が,単に図形部分と重なっているというだけでなく,長方形の周辺のような閉じている点に特徴を有する図形の内部に,納まりよく配されている場合には,看者に,文字部分が図形部分に囲われているとの印象を与え,図形部分と文字部分との一体感を訴えかけるものであり,本件商標においては,さらに,文字を囲む長方形の周辺が,黒塗りの横長長方形状の図形の周辺と白抜きのステッチで描かれた長方形の周辺との2重になっている点,及び内側の長方形状が文字と同じ白抜きで構成されている点で,図形部分と文字部分との一体感がより強調されているものということができる。


 そうすると,本件商標に係る「Indian」の文字部分と 「Motorcycle」の文字部分とは,図形部分も併せて不可分一体的に結合しているものと認められる。「Indian」の文字と「Motorcycle」の文字のそれぞれ語頭の「I」と「T」の各文字が,大文字であることは,原告主張のとおりであるが,そうであるからといって,「Indian」及び「Motorcycle」の各語が別々であることを強調することにはならず(英語の表記法に従えば「Indian Motorcycle」という一連の語句をなす各単語の語頭が大文字であることも, 「Indian」 「Motorcycle」というそれぞれ独立した単語の語頭が大文字であることも,共に不自然であり「Indian」及び「Motorcycle」の各語を別々とすれば,自然であるというものではない。)そうでないとしても,「Indian」,「Motorcycle」の各文字部分と図形部分とに係る上記不可分一体性を損なう程度のものということはできない。


 なお,原告の引用に係る最高裁昭和38年12月5日判決は,その判文によれば,「古代ギリシヤで用いられていたというリラと称する抱琴の図形と『宝塚』なる文字との結合からなり,しかも,これに『リラタカラズカ』,『LYRATAKARAZUKA』の文字が添記されている」ものであって,かつ「右『宝塚』なる文字は本願商標のほぼ中央部に普通の活字で極めて読みとり易く表示され,独立して看る者の注意をひく」という構成より成る商標(当該事件の「本願商標」)に関するものであり,「右図形が古代ギリシヤの抱琴でリラという名称を有するものであることは,本願商標の指定商品たる石鹸の取引に関係する一般人の間に広く知れわたつているわけではなく,これに対し,宝塚はそれ自体明確な意味をもち,一般人に親しみ深いものである」という事情の下で,「本願商標よりはリラ宝塚印の称呼,観念のほかに,単に宝塚印なる称呼,観念も生ずることが少なくないと認め」た原判決の判断を正当としたものであり,本件とは全く異なる事案に係るものというべきであるから,本件に適切であるとはいうことはできない。


(3) 「Indian」の語は我が国においてインドのインド人若しくは「インド人の」又は「北米原住民「北米原住民の」という意味の英語として,広く知られているということができる。


 これに対し「Motorcycle」の語に関して,原告は通常見聞きする語ではなく,一定の観念は生じないと主張し,さらに,仮に「Motorcycle」の語から「自動二輪車」等の観念が生ずるとしても「Indian Motorcycle」に対応する「北米原住民の自動二輪車」等は,明確な意味をもつ熟語として認識されないとも主張する。


 しかしながら「Motor」は「モーター」という外来語として我が国に定着しており,また,例えば「サイクリング」,「レンタサイクル」等の用語が頻繁に使用されることにかんがみると,「cycle」が「自転車」,「二輪車」という意味を有することも広く知られているものと認められ,そうであれば「Motorcycle」が「自動二輪車」,「オートバイ」を意味する単語であることも,同様に広く知られているというべきである。そうすると「Indian Motorcycle」の語から「インドの(又は「インド人の「北米原住民の)オートバイ」との観念が生ずることは明らかであるところ,これが,明確な意味をもつ熟語として認識されないということはできず,原告の上記主張を採用することはできない。


 したがって,上記主張を前提として「Indian」の欧文字と「Motorcycle」の欧文字とは,観念の上からも,一体としてのみ把握しなければならないものではなく,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど,不可分的に結合しているものではないとする原告の主張も失当である。



(4)以上によれば, 本件商標において, 「Indian」の欧文字部分と「Motorcycle」の欧文字部分とは,図形部分とともに,不可分一体のものとして結合しており,これを分離して観察する理由はない。


 そうすると,本件商標からは「インディアンモーターサイクル」の称呼が生ずるものであって, 「インディアン」又は「モーターサイクル」の称呼が生ずるものということはできない。


(5)引用商標からは,その構成に応じて「インディアン」の称呼が生じ,また「インド」の「インド人」若しくは「インド人の」又は「北米原住民」,「北米原住民の」という観念が生ずるものと認められる。


 そうすると,本件商標と引用商標とは,称呼が顕著に相違するとともに,観念も異なり,さらに上記(1)のとおり外観も明確に異なるものであるから両者を類似する商標と認めることはできない。


(6) なお,原告は「Indianロゴ」,「INDIAN」,「インディアン」を含む「商標」や, 「INDIAN MOTOCYCLE」, 「Indian Motocycle」,「インディアンモトサイクル」が原告の商標として,本件商標の登録査定時である平成16年2月4日には周知であり,本件商標の 「Indian」の欧文字部分は,上記「ロゴ」と酷似するものであるとした上,このような事情の下において,本件商標中の 「Indian」及び 「Motorcycle」の各欧文字部分を一体としてのみ把握すべき事情はなく,また,本件商標を,その指定商品中に用いたときは,原告の業務に係る商品であるとの誤認混同が生ずるおそれがあるとも主張する。


  しかしながら,上記主張にかんがみれば 「Indianロゴ」や 「INDIAN MOTOCYCLE 」, 「Indian Motocycle 」,「インディアンモトサイクル」が引用商標とは別の商標であることは明らかであり,また,上記主張に係る「インディアン」, 「INDIAN」が引用商標を指すものであるか否かも明確であるとはいえないところ,仮に,本件商標の 「Indian」の欧文字部分が,原告主張の「ロゴ」と酷似するものであるとしても,上記のように 「Indian」の欧文字部分が 「Motorcycle」の欧文字部分及び図形部分と不可分一体のものとして結合する構成の下で,「Indian」及び 「Motorcycle」の各欧文字部分を一体としてのみ把握すべき事情はないとすることはできない。


 また,審決は,引用商標との対比において(すなわち,引用商標を商標法4条1項11号の「他人の登録商標」として),本件商標が同号に該当する商標であるか否かについて審理判断したものであり,当該審決の取消しを求める本件訴訟において,引用商標以外の商標との関係における類似性や,商品の出所の誤認混同等を,審決の取消事由として審理の対象とし得ないことはいうまでもない。


 したがって,原告の上記主張は失当である。


2 結論

 以上によれば,原告の主張は理由がなく,原告の請求は棄却されるべきである。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


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