●平成21(行ケ)10396 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟(2)

 本日は、昨日に続いて『平成21(行ケ)10396 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年07月21日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100726143954.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録の拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本願商標と引用商標1との類否判断についても参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『イ 本願商標と引用商標1との類否判断につき

(ア) 外観

 本願商標は,前記(1)アで認定したとおり,上部に配置され全体の約3分の2を占める図形部分と,下部に配置され全体の約3分の1を占める文字部分とから構成される結合商標であり,両者は区分して認識できるものの,図形部分は,左側にやや扁平で内部が中空の六角形の図形が,右側に十字形が配置され,十字形の内部の白のクロスラインが強調され左に伸びた部分が左側の六角形の内部と連通しており,かなり特徴的な形態であるから,本願指定商品の取引者,需要者は,当該図形部分に注目するものと認められる。また,文字部分は,上段に「THE FILTRATION COMPANY」の欧文字が,下段に「ROKICO. ,Ltd. 」の欧文字が配置されており,下段部及び「ROKI」の部分がやや強調されているものの,「ROKI」の部分のみが特徴的なものとは認められない。


 他方,引用商標1は,前記(2)アで認定したとおり, 「ROKI」の欧文字が横書きされたとの印象を与える図形の中央部分を,三本の白い横線が右端から左端までを貫く構成と認められる。


 したがって,本願商標と引用商標1とは,その外観において大きく相違するものといわなければならない。


(イ)観念

 本願商標からは,前記(1)アで認定したとおり,上段の文字部分から「フィルトレーション(濾過作用)に関する会社」との一般的な意味合いが生じ,上段の文字部分については,後半の「Co.,Ltd.」の欧文字が法人組織の種類を表す英語表記「company limited」の略語として理解されることから, 「ROKI」という特定の名称の会社を表示したと理解され,結局,本願商標全体は,「フィルトレーション(濾過作用)に関する「ROKI」という名称の会社」と観念されるものと認められる。


 他方,引用商標1は,前記(2)アで認定したとおり,特定の観念を生じるものではない。


 したがって,本願商標と引用商標1とは,その観念において比較できないものといえる。


(ウ) 称呼

 本願商標からは,前記(1)アで認定したとおり,その文字部分全体から「ザフィルトレーションカンパニーロキシーオーエルティーディー」又は「ザフィルトレーションカンパニーロキカンパニーリミテッド」の称呼が生じ,上段の「THE FILTRATION COMPANY」から「ザフィルトレーションカンパニー」の称呼と下段の「ROKICO., Ltd.」 から「 ロキシーオーエルティーディー」 又は「ロキカンパニーリミテッド」の称呼が生じるとともに,「ロキ」の称呼も生じるものと認められる。


 他方,引用商標1は,前記(2)アで認定したとおり,「ROKI」の欧文字4字をデザイン化している図形と一応視認できるものと解されるから,「ロキ」の称呼が生じるものと認められるが,本願指定商品の取引者,需要者にあっては,図形の意味が把握できず,必ずしも明確に「ロキ」と称呼できない場合もあるものと推測される。


 したがって,本願商標と引用商標1とは,その称呼において一応共通するものの,場合によっては相違することもあるものと解され
る。


(エ) 本願商標の使用態様

 証拠(甲23,73〜110)によれば,原告は,インターネット上での自らのウェブサイト,新聞・雑誌における広告や,設置した看板製造納品する製品及び製品の包装,対外的な取引関係書類等において,本願商標をその図形部分及び文字部分全体を一体として使用するとともに,社報や社内手続書類,社用車,名刺,社員証などの社内物品においても,本願商標全体を一体として使用しているものと認められる。


 そうすると,本願商標は,その文字部分と図形部分とが切り離されて使用されたり,図形部分中の「ROKI」の部分のみが使用されることは極めて少ないものと解される。


(オ) 類否判断

 以上の本願商標と引用商標1との外観,観念,称呼についての比較検討の結果を踏まえて,全体的に考察すると,両商標は,称呼について共通する場合があるものの,外観において大きく相違し,観念においても比較できないものと認められるところ,「商標の外観,観念または称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,従って,右三点のうちその一において類似するものでも,他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって,なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標と解すべきではない。」(最高裁昭和39年(行ツ)第110号昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)といえるから,本願商標がその図形部分と文字部分とが常に一体として使用されているという取引の実情も考慮すれば,本願商標を使用した商品が引用商標1を使用した商品とその出所につき誤認混同を生ずるおそれは極めて少ないものといえる。


 したがって,審決が,本願商標と引用商標1とが称呼において共通する場合があることのみを重視し,両商標が類似すると判断したことは誤りであり,この点に関する原告の取消事由3には理由がある。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。