●平成23(行ケ)103093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

本日は、『平成23(行ケ)103093 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成24年2月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120419152802.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標の類否の判断基準についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 井上泰人、裁判官 荒井章光)は、


『1商標の類否の判断基準について

 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。


 しかるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1612頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。


 ・・・省略・・・


(3)小括

 以上によれば,本願商標と引用商標とでは,外観を異にしているが,称呼としては,本願商標が少なくとも「ブラック」との称呼を生じるのに対して,引用商標も「ブラック」との称呼を生じ,観念も,本願商標が「黒,黒色」であるのに対し,引用商標も「黒,黒色」であるというように,称呼と観念とは共通するものといわなければならない。


 なお,この点について,被告は,本願商標及び引用商標からはいずれも「ビイエルシイケイ」との称呼が生じ,特定の観念が生じない旨を主張する。


 しかしながら,本願商標のような構成のなかに図形を配置した場合,当該図形が欧文字の「A」を想起させることは前記のとおりであって,本願商標の称呼を検討するに当たり,欧文字部分(「BL」及び「CK」)と当該図形とを分離して観察することは,それ自体不自然であるというほかない。また,引用商標のような構成の中に本件星形を配置した場合にも,本件星形が欧文字の「A」を想起させる余地があることは前記のとおりであって,引用商標が欧文字「a」の部分を本件星形により置き換えて図案化していると見る余地を否定すべき事情も見当たらない。

 よって,被告の主張は,失当として,採用できない。』

 と判示されました。