●平成20(行ケ)10242 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成20(行ケ)10242 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟貫流ボイラの始動方法とその始動システム」平成21年06月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090701133612.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、課題の共通性に基づく取消事由3(引用発明1への引用発明2の適用の可否についての判断の誤り)における判断が参校になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、

『3 取消事由3(引用発明1への引用発明2の適用の可否についての判断の誤り)について


(1) 引用例1には,次の記載がある。

ア「本発明はボイラ装置の火炉炉壁を構成する水壁管への給水流量を制御するボイラ装置の火炉給水流量制御装置に関する。ボイラ装置の火炉においては,その水壁管への給水流量が過少であると,水壁管が焼損するおそれがある。そこで,水壁間の給水流量としては,常にボイラ負荷に応じてある定められた管内制限流量以上の流量を確保しておく必要がある。…又,ボイラ負荷が低負荷である場合,ボイラ負荷に見合う以上の給水流量を供給する必要があり,このため,ボイラ設計によりそれぞれ異なるものの,一般には定格負荷の20〜25%のときの給水流量を最低給水流量とし,負荷がそれ以下に低下してもこの最低給水流量が確保されるようになっている。貫流ボイラにおいては,このため起動バイパス系を設け,起動時の余剰の給水をバイパスするようにしている。」(1頁右欄2行〜2頁左上欄2行)

イ「缶前バーナ3aと缶後バーナ3bとは,火炉1内の熱負荷が出来得る限り均等になるように対向して配置されている。…給水管6を通る給水は節炭器5により加熱され,流量調整弁7を介して火炉1の炉底で水壁管2に供給される。」(2頁左上欄10〜17行)


ウ「本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,その目的は,火炉内の熱負荷に不均一が生じても,火炉水壁管の焼損を防止することができるボイラ装置の火炉給水流量制御装置を提供するにある。」(2頁右下7〜11行)

エ「以上述べたように,本発明では,火炉の炉壁を構成する水壁管をバーナの配置に応じて複数のグループに分割し,バーナの熱負荷分布に応じて全給水流量を各グループに分配するようにしたので,火炉の熱負荷に不均一が生じても,火炉水壁管の焼損を防止することができる。」(3頁右下13〜18行)


(2) 以上の記載によると,引用発明1は,始動時におけるボイラ負荷が低負荷である場合にも,ボイラ負荷に見合う以上の給水流量の供給を確保することにより,水壁管の焼損防止を課題とするものであって,要するに,複数のバーナ装置を有する火炉を備え,この火炉の炉壁が水壁管によって形成され,この水壁管の給水側が下から上に向けて貫流されるようにした貫流ボイラの始動方法において,起動バイパスを設け,起動時の余剰の給水をバイパスするようにした貫流ボイラの始動方法,であるということができる。


(3) 一方,前記1(1)のとおり,引用発明2は,貫流ボイラの始動方法として,構造が簡単で安価に提供でき,その運転,維持管理も簡便であるとともに,缶水保有部壁(水管壁)の焼損を防ぎ(負荷耐力が強い)ながらも,起蒸時間が短い蒸気ボイラとすることができるものであって,起蒸時間を短くして効率的にするものであるが,その前提として,缶水保有部壁の焼損を防ぐことが前提となっているということができる。


(4) 以上によれば,引用発明1と引用発明2とは,貫流ボイラの始動方法という共通の技術分野におけるものであり,また,その主たる目的は異なるものの,その始動時における水管の焼損防止という共通の課題をも含むものであるから,両発明を組み合わせることに困難性はないというべきである。


4 小括

 上記1ないし3によると,引用発明2を引用発明1に適用することは当業者が容易になし得たものということができるところ,引用発明2によって本願発明と引用発明1との間にある前記相違点は解消されるものであるから,本願発明は,引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明することができたものといわなければならず,その容易想到性を肯定した本件審決の判断に誤りはない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。