●平成24(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権「臭気中和化および液

 本日は、『平成24(行ケ)10328 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋」平成25年4月10日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130417103702.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容され、拒絶審決が取り消された事案です。


 本件では、取消事由2(相違点に関する容易想到性判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 芝田俊文、裁判官 西理香、裁判官 知 野明)は、


『2 取消事由2(相違点に関する容易想到性判断の誤り)について

(1) 事実認定


 ・・・省略・・・


(2) 判断

 本願発明は,上記特許請求の範囲及び本願明細書の記載によれば,飲食物廃棄物の処分のための容器であって,液体不透過性壁と,液体不透過性壁の内表面に隣接して配置された吸収材と,吸収材に隣接して配置された液体透過性ライナーとを備え,吸収材上に被着された効果的な量の臭気中和組成物を持つものである。本願発明は,上記構成により,一般家庭において,ゴミ収集機関により収集されるまで,飲食物廃棄物からの液体の流出を防止し,腐敗に伴う不快な臭気を中和する,経済的なプラスチック袋を提供することができるものである。


 これに対し,引用発明は,上記引用例1(甲8)の記載によれば,厨芥など水分の多いごみを真空輸送する場合などに適用されるごみ袋に関するものであるところ,これらのごみをごみ袋に詰めて真空輸送すると,輸送途中で破袋により,ごみが管壁に付着したり,水分が飛散して他の乾燥したごみを濡らして重くするなどのトラブルの原因となっていたという課題を解決するために,水分を透過する内面材と,水分を透過させない表面材と,上記内面材と上記表面材とに挟まれ水分を吸収して凝固させる水分吸収体との多重構造のシート材でごみ袋を構成することにより,厨芥などのごみの水分を吸収して凝固させ袋内に閉じ込めるようにしたものである。


 ところで,上記引用例1(甲8)の記載等に照らすと,真空輸送とは,住宅等に設置されたごみ投入口とごみ収集所等とを輸送管で結び,ごみ投入口に投入されたごみを収集所側から吸引することにより,ごみを空気の流れに乗せて輸送,収集するシステムであって,通常,ごみ投入口は随時利用でき,ごみを家庭等に貯めておく必要がないものと解される。


 そうすると,引用発明に係るごみ袋は,真空輸送での使用における課題と解決手段が考慮されているものであって,住宅等で厨芥等を収容した後,ごみ収集時まで長期間にわたって放置されることにより,腐敗し,悪臭が生じるような状態で使用することは,想定されていないというべきである。


 これに対し,被告は,引用発明は,厨芥,すなわち,腐敗しやすく悪臭を発生することが想定されるごみを収容するごみ袋であり,腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在すると主張する。


 しかし,上記のとおり,引用発明は,厨芥等を真空輸送に適した状態で収容するためのごみ袋であり,厨芥等を長期間放置しておくと腐敗して悪臭を生じるという問題点は,上記真空輸送により解決されるものと理解することができ,引用例1の「厨房内などに水切り設備を設置して事前に水切りを行えるなどの場合は,本ごみ袋の下部に水切り用孔6を穿設してもよく,この場合はより一層効果的にごみの水分を取り除くことができる」(甲8・段落【0008】)との記載からしても,引用発明が厨芥等から発生する腐敗臭,悪臭の発生を抑制すべき技術課題を内在していると解することはできない。


 以上のとおり,引用発明には,腐敗に伴う不快な臭気を中和するという課題がなく,引用発明に臭気中和組成物を組み合わせる動機付けもないので,本願発明と引用発明との相違点について,引用発明において,効果的な量の臭気中和組成物を吸収材上に被着して相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは,引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとした本件審決の判断には誤りがある。』

 
 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。