●「平成17(ワ)14066 特許権侵害差止等請求事件」(4)

 次に、裁判所は、本事件において、争点4で被告装置及び被告方法が、本件各発明と均等か否かについて判断し、次のように、すなわち、

 『 しかし,これまで検討したところによれば,本件各発明と被告製品及び被告方法との異なる部分である「最下段に複数枚の基羽根を配設した」という構成(方法)が,本件各発明の本質的部分であることは明らかであるから,これを充足しない被告装置及び被告方法が,本件各発明の構成と均等であるということはできない。

  すなわち,特許発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するものと解されるところ,前記1で検討したとおり,本件各発明は,被乾燥物を螺旋状に上昇させるときの始まりが一箇所であったために課題(3)が生じていたという認識のもと,同課題を解決するための手段として,最下部の羽根を複数枚にする構成を採用することにより,作用効果(3)を有し,同課題を解決するに至ったものであるから,最下部の羽根を複数枚とする構成は,まさに本件各発明に特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分に当たるというべきである。

 ・・・
 
  確かに,課題(3)を解決するための技術的手段は,客観的に検討すれば,最下部の羽根を複数枚にする構成以外にあり得ないというものではないと解される。

  しかし,前記1で述べたとおり,本件各明細書の記載に照らせば,本件各発明においては,課題(3)を解決するための手段として,最下部の羽根を複数枚にする構成を採用したことが認められるのであって,この構成を採用したことが,まさに本件各発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分というべきものである。

 ・・・

  以上によれば,最下部に複数枚の基羽根を配設する部分は,本件各発明の本質的部分に当たるというべきであるから,これを充足しない被告装置及び被告方法が,本件各発明と均等であるということはできない。

 よって,その余の点について判断するまでもなく,均等についての原告らの主張は理由がない。』

  と結論付けて、均等侵害も否定しました。
 
  やはり、均等侵害でも、明細書に記載された発明の課題や作用効果から『特許発明の本質的部分』を判断しています。


  なお、上記判決では、特許発明の本質的部分とは、『明細書の特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するもの』と会されるとしていますが、個人的には、まだ抽象的な定義というか表現で、難しいなと思います。