●平成17(ワ)14066 特許権侵害差止等請求事件「乾燥装置」(3)

 また、昨日の続きです。

 『平成17(ワ)14066 特許権侵害差止等請求事件「乾燥装置」平成18年04月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060508131937.pdf)では、さらに、原告の『作用効果(3)は基羽根が複数枚あることによる当然の作用効果,あるいは,具体的実施形態の効果にすぎない。』の主張に対し、裁判所は、次のように原告の主張を否定しています。


 すなわち、『また本件明細書1の効果欄には以上詳述した如く請求項1記載の発明は」という書き出しで,作用効果(3)を含む,請求項1の発明の作用効果が説明されており、・・・は、いずれも本件発明Aの【作用】【効果】として記載されているものであって,本件明細書1に開示された実施例の説明,あるいは,特定の実施形態の作用効果として記載されているものではない。
 したがって,作用効果(3)が,本件発明A自体の作用効果を述べたものであることは明らかであり,原告らが主張するような,具体的実施形態の作用効果と解することはできない。
 以上から,この点に関する原告らの主張は,採用できない。』

と判断し、文理侵害を否定しています。


 つまり、裁判所は、禁反言という言葉を直接利用していませんが、出願人が本発明の課題や作用効果として明細書に記載した以上、後からそれが本発明の課題や作用効果でないと主張することは認められないとする禁反言の法理も理由として、原告の主張を否定しています。
 

 そういう意味で、従前から言われている通り、発明の課題や作用効果の記載も、特許発明の技術的範囲を確定する際に影響を与えますので、請求項の記載と同じくらい重要で、注意が必要です。

 
 本事件でも、課題(3)や作用効果(3)を本発明の課題や効果の欄に記載せず、実施形態の課題や効果としてのみ記載していれば、請求項が同じでも、もしかすると結果が違ったかもしれません。


 次に、裁判所は、均等侵害について判断しますが、長くなりそうなので明日へ。


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