●平成24(ワ)5664 特許権侵害差止等請求事件「育苗ポット及び表示板

 本日は、『平成24(ワ)5664 特許権侵害差止等請求事件 特許権「育苗ポット及び表示板付育苗ポット」平成26年2月6日 東京地方裁判所』 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140217104520.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、新規事項追加の追加禁止の規定である特許法17条の2第3項違反による特許法第104条の3による特許無効の抗弁についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『ウ 原告らは,当初明細書等において,第1凹部は段差部を一つの側壁の一部に形成する場合の実施例に過ぎず,第1凹部を構成する縦壁B及びCは技術的事項1及び2とは無関係であり,2段以上の複数段に形成された育苗ポットが周知であることからすれば,技術的事項1及び2と当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0080】の「本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能である」との記載に接した当業者は,第1凹部の横壁Aを縦壁B及びCを伴わずに側壁の全周に連続的に形成したり,一つの側壁の全幅にわたって形成したりするという技術的事項を自明のものとして把握することができると主張する。


 しかしながら,証拠(甲4)によれば,当初明細書の発明の詳細な説明には,課題を解決するための手段として,第1凹部が不可欠な構成として記載されている(段落【0011】ないし【0025】)と認められるから,そもそも第1凹部が段差部を一つの側壁の一部に形成する場合の実施例に過ぎないということはできない。


 また,当初明細書等において,第1凹部が目印としての機能を果たすものであり,そのための第1凹部が側壁側から差込み口の位置を把握することができる程度の一定の水平方向の幅を有する側壁の一部分の窪みである必要があることは,前記?Aイのとおりである。さらに,原告らが2段以上の複数段に形成された育苗ポットが周知である根拠として援用する証拠(甲15及び16の各1ないし17)に記載された段差部は,いずれも,差込み口設置機能も,目印としての機能も有するものではない。


 そうであれば,技術的事項1及び2の記載がされているということができるとしても,当初明細書の発明の詳細な説明の段落【0080】の記載に接した当業者が,第1凹部の横壁Aを縦壁B及びCを伴わずに側壁の全周に連続的に形成したり,一つの側壁の全幅にわたって形成したりするという技術的事項を自明なものとして把握することができるということはできず,側壁の全周や側壁の幅全体に段差部を形成した育苗ポットが当初明細書に記載されているのと同視することはできない。


 原告らの上記主張は,採用することができない。


?C したがって,本件補正のうち,請求項7の補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,本件発明に係る本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,本件発明に係る本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。


 そして,本件訂正のうち請求項7の訂正も,その訂正内容に鑑みれば,上記の瑕疵を治癒するものとは認められないから,本件訂正発明に係る本件特許は,同様に特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。


3 以上によれば,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,全て理由がない。


 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。