●平成24(ワ)2689 職務発明対価請求事件「安定材付きベタ基礎工法」

 本日は、『平成24(ワ)2689 職務発明対価請求事件 特許権 民事訴訟「安定材付きベタ基礎工法」平成25年12月13日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131227110907.pdf)について取り上げます。


 本件は、職務発明対価請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、争点(1)ア(本件発明1について−内販における独占の利益)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 東海林保、裁判官 実本滋、裁判官 足立拓人)は、


『1 争点(1)ア(本件発明1について−内販における独占の利益)について

(1) 使用者等は,職務発明について特許を受ける権利等を承継しない場合でも,当該特許権について無償の通常実施権を取得すること(法35条1項)からすれば,同条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が当該発明を実施することによって得られる利益の全体をいうものではなく,使用者等が被用者から特許を受ける権利を承継し,当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得,その結果,実施許諾を得ていない競業他社に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益の額,いわゆる「独占の利益」の額をいうものと解される。


 そして,職務発明に係る特許発明の実施を許諾した場合の実施料収入は,当該特許発明の排他権の結果得られた利益と評価し得るから,そのような実施料収入は,原則として,上記「独占の利益」に該当するというべきである。


 また,特許権者が他社に実施許諾をせずに,職務発明の対象となる特許発明を自ら実施している場合における「独占の利益」は,他社に対して職務発明の実施を禁止できることにより,他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較して,これを上回る売上高(超過売上高)を得たことに基づく利益(超過利益)をいうものと解される。


 ここで超過売上高とは,仮に第三者に実施許諾された事態を想定した場合に使用者が得たであろう仮想の売上高と現実に使用者が得た売上高とを比較して算出された差額に相当するものというべきであるが,具体的には,職務発明対象特許の価値,使用者等が採用しているライセンスポリシー,ライセンス契約の有無,市場占有率,市場における代替技術の存在等の諸般の事情を考慮して定められる独占的地位に起因する一定の割合(超過売上げの割合)を乗じて算出すべきである。


 そして,超過利益は,上記方法により算出された超過売上高に,仮想実施料率を乗じて算出するのが相当である。


 以上を前提として,以下,「独占の利益」の有無及びその額を検討する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。