●平成25(行ケ)10111 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「改善さ

 本日は、『平成25(行ケ)10111 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「改善された衣類のような特徴を有する吸収性物品」平成26年1月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140203090559.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、刊行物4,6及び7に記載された事項の認定の誤り(取消事由1)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『(1) 原告は,審決が,刊行物4,6及び7に記載された図面を基に,おむつ本体の上端と本体の両側に存在する耳部の上端がほぼ同じ高さであることを前提として,おむつを装着したときに上端がほぼ一直線になると認定したのは誤りであると主張する。


 しかし,以下のとおり,原告の主張は失当である。


 刊行物4,6,及び7はいずれも国内出願又は国際出願を公開又は公表した刊行物であるところ,例えば,願書に添付する図面は,原則として製図法に従って描くものとされており(例えば,特許法施行規則25条,様式30の備考4項),上記刊行物に記載された図面は,設計図面のように各部の寸法や角度,曲率の値は特定できないとしても,各部の相対的な位置関係や配置構造については,大きな誤りなく記載されているというべきである。


 刊行物4の図1では,おむつ1の前後胴周り域6,8の両側部10に,横方向外方へ延びるフラップ11,12が取り付けられており,フラップ11(本願明細書中の前耳部に相当する。)は,その長手方向端縁が,おむつ1の前胴周り域6の長手方向端縁とほぼ一直線になるように,また,フラップ12(本願発明の後耳部に相当する。)は,その長手方向端縁が,おむつ1の後胴周り域8の長手方向端縁とほぼ一直線になるように,それぞれ取り付けられている。また,図3では,おむつ1の着用状態において,フラップ11,12の上端縁と,前胴周り域6,後胴周り域8の上端縁の位置がほぼ同じ高さになっていると理解できる。刊行物6のFig.3では,使い捨てパンツ様衣類20の主要吸収性部分30の長手方向一方端の両側に前方側部42,52(本願明細書中の前耳部に相当する。)が形成され,他方端の両側に後方側部45,55(本願発明の後耳部に相当する。)が形成されており,後方側部45,55の長手方向端縁は主要吸収性部分30の長手方向一端側の端縁とほぼ一直線となっており,前方側部42,52の長手方向端縁は主要吸収性部分30の長手方向他端側の端縁とほぼ一直線となっていると解することができる。また,Fig.1では,衣類20を閉じた状態において,後方側部45及び55,前方側部42及び52と衣類20の腰部開口部80の上端部の位置は,ほぼ同じ高さに形成されていると理解できる。


 刊行物7の図2では,フロントサイドパネル46(本願明細書中の前耳部に相当する。)及びバックサイドパネル48(本願発明の後耳部に相当する。)の上端縁がおむつ20の上端縁とほぼ一直線となっており,図1では,おむつ20を閉じた状態で,フロントサイドパネル46及びバックサイドパネル48の上端縁とおむつ20の上端部の位置がほぼ同じ高さに形成されていると理解できる。


 以上によると,刊行物4,6及び7に,装着時におむつ本体の上端と耳部の上端
がほぼ同じ高さになる構成が記載されているとした審決の認定に誤りはない。



(2) 原告は,特許出願の願書に添付される図面に表示された寸法や角度,曲率などは,必ずしも正確でなくても足りるのであり,刊行物4,6及び7には,おむつの上端を一直線に揃えることを要件とする旨の記載はなく,たまたま,上記図面において,おむつの上端がほぼ一直線になるように描かれていたとしても,何らかの技術的課題を解決する手段として上記構成が採用されていると解することはできないと主張する。


 しかし,願書に添付する図面は,発明の内容を理解しやすくするために,明細書の補助として使用されるものであり,前記のとおり,原則として製図法に従って描くものとされていることなどからすると,図面に表示された寸法や角度,曲率などは必ずしも正確でないとしても,各部の相対的な位置関係や配置構造については,大きな誤りなく記載されているというべきである。また,確かに,刊行物4,6及び7の明細書部分等には,おむつの上端を一直線に揃えることを要件とする旨の記載はなく,各刊行物に記載された発明において,この点が構成とはされていないものの,図面により,おむつの上端を一直線に揃えることの技術的意義を理解することは可能である。各刊行物の図面は,各刊行物に記載された発明の代表的な実施態様の一つを示したものと解することができるのであって,各刊行物には,そのような実施態様の一つとして,各図面に記載されているように,装着時におむつ本体の上端と耳部の上端をほぼ同じ高さにするとの技術が開示されているということができる。

(3) 小括

 以上のとおり,原告主張の取消事由1には,理由がない。』

 
 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。