●平成25(ワ)12233意匠権侵害差止等請求事件「ディスク包装用容器」

 本日は、『平成25(ワ)12233 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟「ディスク包装用容器」平成26年1月23日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20140130141100.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本件意匠と被告意匠との類似の判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 藤田壮)は、


『1 被告が平成24年11月14日以前に原告の本件意匠権を侵害したこと,又は,被告が同日以前に本件意匠権を侵害し,原告がこれによる損害賠償請求権を取得したことについて,原告は主張も立証もしないから,原告の損害賠償請求のうち同日以前の損害に関する部分は,理由がない。


2 そして,原告の差止め及び廃棄の請求並びにその余の損害賠償請求は,以下のとおり,理由がない。


(1) 本件意匠と被告意匠との対比

ア 本件意匠と被告意匠の共通点

 本件意匠と被告意匠は,基本的構成態様において,全体形状が薄い直方体であり,基台部,基台部の左側端部にあるヒンジ部を介してその右側端部が接続する蓋部からなり,基台部内側に留具と留具の周囲に土手のようになった支持部を有し,基台部右側面に指掛部を設け,蓋部にクリップを設けており,具体的構成態様において,?本体が,縦横の寸法比が約9:7と平面視で正方形に近い長方形の形状をした箱状に形成され,その四角隅部が緩やかな曲線を描き,背面部側の左右2つの角が,平面視において,四半円状の大きな曲線となっており,?蓋部の表面上端部に左右端部が弧状の上端縁部分と水平バー状の上仕切り片とで帯状凹所を形成し,この帯状凹所の中央部に長径と短径とからなる楕円形状の線を配し,?蓋部の裏側に一直線のバー部材が蓋部表面上端部の帯状凹所の下端の左右方向の裏側あたりと蓋部内側の下端部より少し上方に形成され,?蓋部内側の側面付近に2箇所設けられたクリップが蓋部表面上端部の帯状凹所の幅の分だけ下側に偏って設けられているという点において共通する。


イ 本件意匠と被告意匠の相違点

(ア) 本件意匠と被告意匠には次の点で相違する。

ア 本件意匠は,透明でなく内部を見ることができないが,被告意匠は半透明で内部を見ることができる。


イ 本件意匠は,基台部内側の部分に4つの土手状の支持部があり,基台部内側の下寄りの位置に配置されているが,被告意匠は,基台部内側の上端部に帯状凹所が,下端部に紐状凹所があり,両者に囲まれた部分の中央部にディスクを支持するための円形の留具があり,その周囲を取り囲むようにして,上下に6分割された土手状の支持部が外周上に設けられている。


ウ 本件意匠は,蓋部裏側のバー部材が蓋部裏側の左右端部に接続していないが,被告意匠は,蓋部裏側のバー部材が蓋部裏側の左右端部に接続している。


(イ) 被告意匠には,次のとおり,本件意匠にない構成がある。

 被告意匠は,基台部の上下端部を除く外面の略開閉端部から蓋部の上下端部を除く外面の略開閉端部にわたって設けられた幅広長方形状の透明カバー体がある。


(2) 本件意匠の要部

本件意匠は,その登録意匠に係る物品がディスク包装用容器で,通常は外部を閉じた状態にあり,ディスクの取出しや収納の際に蓋部を開いた状態にするものであって,本件意匠の需要者であるディスク製造者は,もっぱら蓋部を閉じた状態にしたときの平面の形状や蓋部を開いた状態にしたときの平面の形状を観察することになる。


イ 証拠(甲5ないし7,乙3,4)によれば,本件意匠の意匠登録出願前において,縦横の寸法比1対約0.83と平面視で正方形に近い長方形の形状をした箱状に形成され,その四隅部が四半円状の緩やかな曲線を描いたディスク収納用ケースや縦横の寸法比1対約0.89と平面視で正方形に近い長方形の形状をした箱状に形成されたディスク収納用ケースの意匠が公知であったことが認められる。


以上の本件意匠に係るディスク包装用容器の性質,用途,使用態様に公知の意匠の構成を併せ考慮すれば,本件意匠のうち看者である需要者の注意を最も惹きやすい部分は,蓋部を閉じ,又は開いた状態にしたときの平面の形状であり,特に,蓋部を閉じた状態にしたときにおける蓋部表面上端部に形成した帯状凹部とその中央部に配した楕円形状の線や蓋部を開いた状態にしたときにおける基台部内側の下寄りの位置に配置された4つの土手状の支持部であり,これらが本件意匠の要部であると認められる。


エ 原告は,基台部内側に配置されたディスク支持部の形状は必然的に選択されるもので,新たな創作を加える余地が大きくないし,消費者はディスクを購入する際に容器の内部を見ることができないから,本件意匠の需要者であるディスク製造者が本件意匠の内部に着目することはないと主張する。


 しかし,証拠(甲2,5,6,乙2ないし4)によれば,ディスク包装用容器において,基台部内側に配置されたディスク支持部の位置や形状には様々なものがあることが認められるから,これに新たな創作を加える余地がないということはできないし,消費者がディスクを購入する際に容器の内部を見ることができないとしても,このことから,直ちに,蓋部を開いた状態が本件意匠の需要者であるディスク製造者の注意を惹かないということはできない。原告の上記主張は,採用することができない。


(3) 本件意匠と被告意匠の類否

 本件意匠と被告意匠には,上記(1)イのとおりの相違点があり,その中でも,蓋部を開いた状態において,本件意匠は,基台部内側の下寄りの位置に4つの土手状の支持部があるのに対し,被告意匠は,基台部内側の上端部に帯状凹部が,下端部に紐状凹部があり,両者に囲まれた部分の中央部の留具を取り囲むように上下に6分割された土手状の支持部が外周部上にあるという点で,本件意匠の要部において大きな差異があるから,これらの差異により,本件意匠と被告意匠は,看者に対し全体として異なる美観を与えるものである。


 そして,本件意匠と被告意匠には,上記(1)アのとおりの共通点があり,その中の蓋部表面上端部に形成した帯状凹部とその中央部に配した楕円形状の線は本件意匠の要部であるが,その他の共通点は公知の意匠にある構成であるから,上記の相違点が看者に与える美観の相違を凌駕するものではない。


(4) そうであるから,被告意匠が本件意匠に類似するとは認められない。


 したがって,原告の差止め及び廃棄の請求並びに損害賠償請求のうち平成24年11月14日以前の損害に関する部分を除いた部分は,理由がない。


3 よって,原告の請求は,すべて理由がないから,いずれもこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


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