●平成25(行ケ)10034 審決取消請求事件 特許権「継手装置」 

 本日は、『平成25(行ケ)10034 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「継手装置」平成25年9月3日知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130912102008.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決に対する審決取消請求事件で、その請求が認容された審決が取り消された事案です。


 本件では、4容易想到性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 中村恭、裁判官 中武由紀)は、


『4容易想到性について


・・・省略・・・


(5)被告は,引用発明の複合継手部材には,捻り力(トルク)に対して本体1と筒状部20との一体化をより強固なものにするという技術的課題が内在しており,これは本願発明の解決課題と共通するから,容易想到性がある旨主張する。


 しかし,道路標識のポールの技術分野における技術常識(乙1ないし3)に照らし,引用発明の継手部材においても捻り力(トルク)に対し本体と筒状部の一体性をより強固なものにするとの技術的課題が内在しているとしても,刊行物1の図9〜11に記載された溶湯が貫通孔に浸入,凝固する構成においては,捻り力(トルク)に対して本体1と筒状部20との一体化をより強固なものにするという技術的課題は既に解決されており,筒状部(第1の継手部材)の端面に切欠き部を形成する動機や,さらに貫通孔に代えて端面に切欠き部を形成する動機はない。


 また,被告は,刊行物2は,「鋳ぐるみ部品の空回りを防止するための技術的手段を開示するもの」であるが,そのような複数部品間で空回りを防止するものである以上,刊行物2に記載された技術的事項と,引用発明である複合継手部材とは,2つの部材間に相対的に作用する捻り力に対抗して,2つの部材を回転方向に一体化するという技術的課題においても共通しているから,刊行物2に記載された技術的事項を,引用発明に適用するという動機付けは十分存在すると主張する。


 しかし,前記のとおり,引用発明と刊行物2発明は,技術分野が異なるだけではなく,その解決課題も隔たっており,刊行物2の記載事項から,複数部材間に相対的に作用する捻り力に抗して,2つの部材を回転方向に一体化するという技術課題において共通していると認識するのは当業者にとって容易ではなく,引用発明に刊行物2を適用する動機付けを見いだすことは困難であり,容易に発明をすることができたものということはできない。

第6結論

 以上のとおり,原告ら主張の取消事由には理由がある。


 よって,原告らの請求を認容することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。

 
 詳細は、本判決文を参照して下さい。