●平成23(ワ)6878 特許権侵害差止等請求事件「着色漆喰組成物の着色

  本日も、『平成23(ワ)6878 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「着色漆喰組成物の着色安定化方法」平成25年8月27日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130911131655.pdf)について取り上げます。


  本件では、争点1−3(本件特許権2の間接侵害(特許法101条5号))について5号の間接侵害が認められた点で参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松阿彌隆、裁判官 松川充康)は、


『3争点1−3(本件特許権2の間接侵害(特許法101条5号))について

 原告は,被告製品1の製造販売等が,方法の発明に係る本件特許権2の間接侵害(特許法101条5号)に当たる旨主張するので,以下検討する。



(1)「その方法に用いる物」及び「その発明による課題の解決に不可欠なもの」


 本件特許発明2−1は,「石灰,結合剤及び水を含有する着色漆喰組成物」を前提に,これ「によって形成される着色漆喰塗膜の色飛びまたは色飛びによる白色化を抑制する」という作用効果を有する方法(構成要件A)を示すものであるが,その方法そのものは,「上記漆喰組成物の着色に白色顔料と着色顔料として酸化金属またはカーボンブラックを組み合わせて用いる」(構成要件B2)と特定されている。


 このような文言からすれば,「石灰,結合剤及び水を含有する着色漆喰組成物」で,その「漆喰組成物の着色に白色顔料と着色顔料として酸化金属またはカーボンブラックを組み合わせて」いる物は,上記作用効果を有する方法発明である本件特許発明2−1との関係において,「その方法の使用に用いる物」であると共に「その発明による課題の解決に不可欠なもの」(特許法101条5号)であり,また,その「白色顔料」が「酸化チタン」(構成要件C2)であれば,本件特許発明2−2との関係においてもこれらに該当することになる。


 そして,被告製品1は,「白色顔料として酸化チタン,着色顔料として酸化金属又はカーボンブラック,石灰,アクリル樹脂エマルション,メチルセルロース及び水を含有する着色漆喰組成物」であること,被告製品1が含有する「白色顔料として酸化チタン」,「着色顔料として酸化金属またはカーボンブラック」,「石灰」,「アクリル樹脂エマルション」及び「水」が,それぞれ本件特許発明2−1及び同2−2の「白色顔料(酸化チタン)」,「着色顔料として酸化金属またはカーボンブラック」,「石灰」,「結合剤」及び「水」に相当することは,当事者間に争いがない。


 よって,被告製品1は,本件特許発明2−1及び同2−2のいずれの関係においても,「その方法の使用に用いる物」及び「その発明による課題の解決に不可欠なもの」に該当する。


 なお,被告は,被告製品1に酸化チタンを配合するのは,光触媒機能を利用するためであり,「着色漆喰塗膜の色飛びまたは色飛びによる白色化を抑制する方法」(構成要件A2)は使用していない旨主張するが,原告は,被告が本件特許発明2の方法を使用したと主張しているのではなく,同方法に使用する被告製品1の製造販売等が本件特許権2の間接侵害を構成すると主張しているのであり,被告の上記主張は失当である。


(2)「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」


 被告は,平成23年1月17日,原告から,本件特許発明2が特許発明であること,被告製品1が本件特許発明2の実施に用いられるものであることを記載した照会書と題する書面を受領した(甲6の1・2)のであるから,同日以降の被告製品1の製造販売等については,「その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら」(特許法101条5号)のものであったといえる。


(3)小括

 以上より,平成23年1月17日以降の被告による被告製品1の製造販売等は,本件特許発明2−1及び同2−2との関係において,特許法101条5号の規定する各要件を充足するものであり,本件特許権2の間接侵害を構成するものといえる。


(4)差止め等の要否及び範囲

 被告は,平成24年8月1日以降,被告製品1の製造販売を行っていないと主張するが,本件訴訟係属以前からの経緯等に照らし,被告が被告製品1又はこれと同一構成の製品を製造販売等するおそれのあることは,前記2で述べたのと同様であり,被告製品1又はこれと同一構成の製品の在庫が残存している可能性も否定できないから,別紙被告製品目録1の構成欄記載の構成を具備する製品の製造販売等の差止め及び廃棄の必要性が認められる。』


 と判示されました。