●平成24(ネ)10093 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟

 本日は、『平成24(ネ)10093 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟「液体インク収納容器,液体インク供給システムおよび液体インク収納カートリッジ」平成25年8月9日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130814102118.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止請求控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、当審における当事者の主張に対する判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 設樂隆一、裁判官 西理香、裁判官 神谷厚毅)は、


『2当審における当事者の主張に対する判断


(1)自由技術の抗弁について

 控訴人は,控訴人各製品は,本件特許の出願日までに既に公知となっていた技術(乙14,乙37及び乙13)を用いているものであるか,これらから極めて容易に推考できたものであるから,本件特許権直接侵害又は間接侵害は成立しない旨主張する。


 しかし,自由技術の抗弁を特許権侵害訴訟における抗弁として認めることができるかどうかはともかくとして,同抗弁を主張する者は,少なくとも本件訂正発明1の全ての構成要件に対応する構成を備えた製品が本件特許の出願日において既に存在していたことを主張立証する必要があるところ(本件訂正発明2の関係においても同様の主張立証が必要である。),控訴人の上記主張は,控訴人各製品につき,本件訂正発明1の構成要件を考慮することなく,控訴人主張控訴人各製品構成のとおりに特定することを前提とするものであること,及び,本件特許の出願日における公知技術から極めて容易に推考できたものであるとの主張も含むものであり,そもそも自由技術の抗弁の主張とはいえず,主張自体失当であり,本件特許権直接侵害又は間接侵害が成立しない旨の抗弁としてはこれを採用することはできない。


 すなわち,本件訂正発明1は,引用する原判決認定のとおり,記録装置のキャリッジに着脱可能な液体インク収納容器に関するものであり,これに対応する記録装置(プリンタ)の構成と一組のものとして発明を構成するものであるから,控訴人としては,控訴人各製品の構成を特定するに当たっては,本件訂正発明1における記録装置側の構成を含めて,その全ての構成要件に対応した控訴人各製品の構成を特定して主張すべきである。控訴人は,上記構成を除いた控訴人主張控訴人各製品構成を前提として同抗弁を主張するものであり,控訴人の上記主張はその前提において誤っており,これを採用することはできない。


 なお,仮に,控訴人が,控訴人各製品につき,本件訂正発明1の全ての構成要件に対応するものとして特定して同抗弁を主張したとしても,控訴人が引用する乙14,乙37及び乙13には,「光照合処理」に関する記載も示唆もないので,本件訂正発明1の構成と同一の構成の製品が本件特許の出願日において存在したと認めることはできない。


(2)時機に後れた防御方法であるか否かについて


 被控訴人は,控訴人の本件防御方法の提出が時機に後れたものである旨主張する。


 しかし,本件防御方法のうち,当判決における第2の2(4),(6)及び(9)記載の主張は,既に提出済みの証拠に基づき判断可能なものであるし,同3(1)ア記載の主張についても,直ちに取調べの可能な書証及び既に提出済みの証拠に基づき判断可能なものである。さらに,当裁判所は,平成25年6月10日の当審第2回口頭弁論期日において,弁論を終結したものである以上,本件防御方法の提出が「訴訟の完結を遅延させる」(民訴法157条1項)
ものとはまでは認め難い。


 よって,本件防御方法を時機に後れたものとして却下する必要はない。』


 と判示されました。