●平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件「情報データ出力

 本日は、『平成24(ワ)16103 特許権に基づく差止等請求事件 特許権 民事訴訟「情報データ出力システム」平成25年8月29日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130906110727.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権に基づく差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、出願経過を参照しての特許発明の技術的範囲の解釈について参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二、裁判官 清野正彦、裁判官 植田裕紀久)は、


『1争点(1)ウ(構成要件CないしFの「共用アプリケーションソフトウェア」の充足性)について


 ・・・省略・・・


エ加えて,原告らを含む出願人は,本件各特許権の出願経過において,特許庁審査官の本件各拒絶理由通知書(前記(1)イ(ア))に対して本件各意見書を提出し,これには同(イ)のとおりの記載がされていた。


 これをみると,原告らは,本件各発明が乙5発明とは異なるもので,かつ,当業者が乙5発明から本件各発明を容易に想到することができないものであることを裏付けるために,リーダーを用いて印刷した場合,文字フォントを統一することができず,クライアントがサーバと同一の文字フォント,サーバと同一の文字数(情報データの個数)で帳票を出力することができない場合があるのに対し,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアにはこのような制約がなく,規則正しく最適なレイアウトで出力することができる旨主張しているのであるから,本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアはリーダーとは異なるアプリケーションソフトウェアを想定している旨の主張をしていることが明らかである。


 そうすると,本件各特許の出願経過においてこのような主張をし,その登録を受けた原告らが,本件訴訟において,これを翻し,リーダーが本件各発明の共用アプリケーションソフトウェアに当たるとの主張をすることは,信義誠実の原則に反し,許されないというべきである。この点からも,原告らの主張は理由がない。


オ以上によれば,リーダーが本件各特許にいう「共用アプリケーションソフトウェア」に当たるとの原告らの主張は理由がない。そして,原告らは,被告サービスに関し,共用アプリケーションソフトウェアに当たるものとしてリーダー以外のアプリケーションソフトウェアを主張していないのであるから,被告サービスは,本件各発明の構成要件CないしFを充足せず,本件各発明の技術的範囲に属しないものと解するのが相当である。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。