●平成24(ワ)6771 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟

 本日は、『平成24(ワ)6771 意匠権侵害差止等請求事件 意匠権 民事訴訟 平成25年8月22日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130829114043.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点1(被告意匠は,本件意匠に類似するか)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、裁判官 西田昌吾)は、


『1 争点1(被告意匠は,本件意匠に類似するか)について


 ・・・省略・・・


(3)本件意匠の要部

 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものである(意匠法24条2項)。


 したがって,その判断に当たっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意を惹き付ける部分について要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。


 以下,このような観点から,本件意匠の要部について検討する。




 ・・・省略・・・


ウ 判断

 前記(3)ウで検討したところによれば,前記アの共通点に係る構成は,亀甲墓の屋根が一般的に備える構成である。しかも,これらの構成の範囲でみても,前記イのとおり,被告意匠のオメガ状の縁取りの先端には,本件意匠にはない半球状の突起物が付されており,オメガ状の縁取りの幅も本件意匠と比べて細く,亀の甲羅の形状をした隆起部についても,隆起の程度,形状が異なるという差異点があり,これらの差異点は本件意匠と被告意匠とを対比した場合に明らかなものである(これらの差異点に係る被告意匠の具体的構成態様及びそこから生じる美感は,本件意匠よりも各公知意匠に共通するものである。)。


 次に,前記イの差異点についてみると,被告意匠は,本件意匠の要部である,庇部分の左右両端がオメガ状の縁取りに囲まれた亀の甲羅の形状をした隆起部の周囲(底辺)と連続していること(その結果,庇部分の横幅が,上記隆起部の横幅と同程度となる。),庇部分の中央が上方に湾曲した(唐破風様)3層構造であることの2構成を備えていない。


 したがって,両意匠が要部において構成態様を共通にするものであるとはいえない。また,前記(3)ウで述べたとおり,正面視の意匠は,需要者の注意を相当惹き付けるものであり,全体の美感に大きく影響するところであるが,被告意匠の庇部分は矩形部分の幅よりも相当程度外方に延伸しており,両端の先端部が上方に向かって尖っている点において,本件意匠の庇部分と対比すると,正面視の美感が一見して異なっている。


 これらのことからすれば,被告意匠と本件意匠は,要部において構成態様を共通にするものであるとはいえないし,上記のとおり矩形部分の構成についても看過できない差異点があり,全体として美感を共通にするものであるともいえない。


 したがって,被告意匠は,本件意匠に類似するものであるとは認めることができない。
主文のとおり判決する。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。