●平成24(行ケ)10452 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ジョイ

 本日は、『平成24(行ケ)10452 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ジョイント」平成25年8月6日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130807092736.pdf)について取り上げます。」


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(相違点1)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、裁判官 新谷貴昭)は、


『4 取消事由1(相違点1)について

 一般に,共通又は同一の技術分野における周知技術の付加又は置換は,当業者がごく普通に着想することであるところ,上記3で認定したとおり,動力を伝達するジョイントにおいて,ハブの収容部に球体が収容される複数の長手溝を一体的に形成することは,本願優先日において周知の技術手段であり,ハブの収容部に複数の長手溝を一体的に形成することは,構造の簡略化といえる。構造の簡略化は装置や器具において共通する課題であるから,引用発明の接合筺部2に,上記周知の技術手段を適用することにより,引用発明との相違点1に係る本願発明の構成である各曲面状部10,10’を円形接合腔部3と一体的に形成することは,当業者が容易に想到し得ることであるといえる。


 原告は,引用発明の接合筺部2に,上記従来周知の技術手段を適用しようとする動機付けがなく,また,先端部10の先端加工作業は,円形接合腔部3内に加工装置を差し込んで行う必要があるので,技術的困難性があるから,審決の相違点1に係る容易想到性判断には誤りがある旨主張する。


 しかしながら,引用発明の接合筺体2(ハブ)と受動回転軸4(部材)と鋼球7(球体)の構造を上記周知の技術手段に置換することは,当業者が容易に想到し得ることである。一般的に,構造を簡略化して,装置や器具の製造や取扱いを容易にすることは,ごく普通に行われているから,引用発明の複雑な構造に代えて刊行物2ないし4に記載のごとく簡単な構造とすることは,当業者が通常考えることであり,採用することであるといえる。


 また,刊行物2には,「本発明の目的は従来の自在継手の欠点を伴わず,機械加工および組立てが容易であって,良好なすべり性を有し,大きな動作角度(例えば20°)が可能であり,特に等速型継手の構成に適したボール型伝動装置を提供することにある。」(2頁右下欄9〜14行)と記載されているように,機械加工および組立てを容易にするという課題はジョイント(伝動継手)に共通するから,引用発明に上記各刊行物に記載の周知技術を適用することは,動機付けがあるといえる。

 以上のとおり,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであって,原告の取消事由1に関する主張は理由がない。』

 と判示されました。