●平成24(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権「可撓性ポリウレタ

 本日は、『平成24(行ケ)10300 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「可撓性ポリウレタン材料」平成25年7月17日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130806094217.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、記載要件不備についての判断の誤り(取消事由2)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『3記載要件不備についての判断の誤り(取消事由2)について

 本願発明1の構成要件を再載すると,次のとおりである。

「a第1級脂肪族イソシアネート架橋を有し,
bまた,少なくとも25重量%の第1級ポリイソシアネート架橋を有しており,
cかつ1.0×108
パスカル以下の曲げ弾性率,
d1.0×108
パスカル以下の貯蔵弾性率,
eおよび94未満のショアA硬度を呈する
fポリウレタンであって,
gさらにそのポリウレタンは,
h2以下のホフマン引掻硬度試験結果,
iおよび1ΔE以内のカラーシフト(熱老化試験ASTMD2244−79に準拠)の
jいずれか一方または両方の性質を呈するか,または呈しない
kポリウレタン。」


 しかるに,審決は,以下のとおり判断する。すなわち,特許請求の範囲の記載において,本願発明1におけるポリウレタンは,「構成gないし構成k」の部分に係る「要件a及び/又は要件b」,あるいは,「要件c」を満たすことが必要であるところ,本願明細書の発明の詳細な説明には,「要件a及び要件b」を満足する具体例,並びに「要件a」を満足する具体例の記載はあるが,「要件bのみ」及び「要件c」を満足する具体例の記載がなく,当業者が,本願明細書の記載に基づいて,「要件bのみ」及び「要件c」を満足するポリウレタンがその発明の課題を解決できると認識できるとは認められないから,特許法36条6項1号を充足しないと判断した。


 しかし,審決の判断には,以下のとおり誤りがある。


 本願発明1に係る特許請求の範囲の記載は,「構成aないし構成f」と「構成gないし構成k」からなる。このうち「構成gないし構成k」の部分は,「2以下のホフマン引掻硬度試験結果,および1ΔE以内のカラーシフト(熱老化試験ASTMD2244−79に準拠)のいずれか一方または両方の性質を呈するか,または呈しない」と記載されており,その記載振りからも明らかなように,同記載部分は,発明の専有権の範囲を限定する何らの文言を含むものではないので,格別の意味を有するものではない。


 「構成gないし構成k」の部分は,限定的な意味を有するものではないことから,本願発明1の技術的範囲は,「構成aないし構成f」の記載によって限定される範囲であると合理的に解釈される。そして,本願明細書の段落【0049】【0050】【0059】ないし【0061】並びに表3,表5及び表6には,本願発明1の構成aないし構成fを充足する実施例1,13及び14が記載されていると理解される。


 以上のとおりであるから,本願発明1については,本願明細書の発明の詳細な説明において,「構成gないし構成k」の部分に係る「要件bのみ」及び「要件c」を満足する具体例を記載開示しなかったことが,少なくとも,特許法36条6項1号の規定に反すると評価することはできない。


 したがって,「要件bのみ」及び「要件c」を満足する具体例の記載がないことを理由として,特許法36条6項1号の要件を充足しないとした審決の判断には,誤りがある。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。