●平成24(ワ)4229 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟

 本日は、『平成24(ワ)4229 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年6月27日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130719141436.pdf)について取り上げます。


 本件は、不正競争行為差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、重大な過失がなかったか否についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 高野輝久、裁判官 三井大有、裁判官 志賀勝)は、


『1 争点1(被告が,被告各商品を譲り受けた時にこれらがいずれも原告各商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がなかったか否か)について


(1) 前記前提事実に,証拠(甲2,6の1ないし6,9,19,27,乙1)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実を認めることができる。


ア 原告は,大手インターネットショッピングモールである楽天市場に原告ショップを開設し,そこで原告各商品をペンダントランプ,シャンデリア,壁掛け照明及びテーブルランプ等として販売しており,原告ショップのサイトでは,画像により原告各商品の形態を確認することができる。ランプシェードを用いた原告の商品は100種類程度あり,そのうちのいくつかは,遅くとも平成20年5月ころ以降,楽天市場の洋風ペンダントライト,シャンデリア,壁掛け照明といった部門のランキングでしばしば1位等の上位を獲得してきた。


イ 訴外メーカーは,インターネットで原告各商品を見て,これらに依拠してサンプルのデザインをし,業者向けのインテリア用品の輸入販売等を営む被告にサンプル画像を添付したメールを送信して受注活動をした。これを受けて,被告は,訴外メーカーに被告各商品を発注し,訴外メーカーが製造した被告各商品を購入してこれを輸入し,業者向けに販売した。被告は,販売に当たり,被告各商品の形態に類似する商品の有無につき調査をしていなかった。なお,訴外メーカーは,少なくとも被告商品3及び5の梱包の外側面に,原告ショップに掲載された原告商品3及び5の画像をプリントしたものを貼付していた。


ウ 被告は,本件警告書の送付を受けた後の平成23年10月中旬ころ,訴外メーカーに対し,被告各商品の製造中止を申し入れるとともに,発注分をキャンセルした。その後,被告が訴外メーカーに対して被告各商品製造販売の経緯等につき問い合わせをしたところ,訴外メーカーは,平成23年3月ころ,これに応じて上記イ記載の訴外メーカーの製造販売の経緯等を書面で回答した。


(2) 上記(1)認定の事実によれば,被告は,被告各商品を訴外メーカーから譲り受けたものであると認められる。


 原告は,被告各商品の製造の意思決定を行うのは被告自身であること,被告が予め顧客に告知,宣伝等を行った上で商品の販売をしていること,被告が専用の梱包で被告各商品を仕入れていること,訴外メーカーが製造した被告各商品の全量が被告に納入されていることからすれば,被告が訴外メーカーを手足として用いて被告各商品を製造し,これを販売しているのであると主張する。


 しかしながら,訴外メーカーは,被告各商品の注文を受けて,製造,販売をしているものであって,この場合に,被告が被告各商品の販売開始に先立って顧客に告知,宣伝等を行うことも可能であるし,被告専用の梱包とするのは訴外メーカーが日本向けに輸出する際に必要とされる輸出荷印が付された梱包であるというに過ぎず,しかも輸出荷印は簡易な方法により付することができる(乙202ないし204)のである。また,被告各商品の全量が被告に納入されていることを認めるに足りる証拠はなく,仮に被告のみに被告各商品が納入されていたとしても,それは被告のみが発注していたからに過ぎないとも考えられるから,原告の上記主張をもって,被告が被告各商品を訴外メーカーから譲り受けたとの前記認定を覆すことはできず,他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。


(3) 被告は,インテリア用品の輸入販売業者であり,自らがデザインしたものでない商品を取り扱うに当たっては,それが模倣品であるなど他者の利益を侵害することがないかどうかにつき注意を払うべき立場にあったといえるのみならず,ランプシェードを用いた原告の商品は楽天市場で人気があり,また,被告の販売先は業者であるから,被告各商品と原告各商品の出所の異同や被告各商品が模倣品ではないか等につき,問合せを受け得る立場にあったということができる。そして,原告各商品は,大手インターネットショッピングモールである楽天市場に開設された原告ショップに画像が掲載されているし,被告は,訴外メーカーに対し模倣の有無につき問い合わせることもできたのであるから,被告は,被告各商品が原告各商品の形態を模倣したものであるかどうかについて,容易に調査をすることができた。


 そうすると,被告が訴外メーカーから被告各商品を購入して我が国に輸入するに当たっては,被告には被告各商品が原告各商品の形態を模倣したものであるかどうかを調査すべき取引上の注意義務があったというべきである。


 しかるに,被告は,この点につき何らの調査も行わなかったというのであるから,被告各商品が原告各商品の形態を模倣したものであることを知らなかったとしても,知らないことにつき,重大な過失がなかったとは到底認めることができない。』


 と判示されました。

 
 詳細は、本判決文を参照して下さい。