●平成23(ワ)28857 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴

 本日は、『平成23(ワ)28857 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年7月19日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130726100718.pdf)について取り上げます。


 本件では、原告商品と被告商品の商品形態が実質的に同一であるか(争点2)についてについての判断も参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 小川雅敏、裁判官 西村康夫)は、


『2 原告商品と被告商品の商品形態が実質的に同一であるか(争点2)について

(1)ア 原告商品の構成は,前記1(2)アのとおりである。


イ 他方,被告商品の構成は,別紙被告商品目録記載3,別添写真目録及び図面のとおりである。


 被告商品は,プラスチック製であり,その全体の形状は,?半球状の滑らかな先端部とそれに接続する溝のある円柱からなるヘッド部分,?始端部がヘッド部分に接続し,始端部はヘッド部分より細く,ヘッド部分から離れるに従ってより細くなる円すい状台とこれに接続する蛇腹状の円柱体からなるネック部分,?円柱体に接続する涙型のボディ部分,?ボディ部分末端に空けられた穴に通されたストラップリング及びストラップリングに付けられたカニカン(接続金具),?カニカンに付けられたストラップ紐によって構成され,その全長64mm,ヘッド部分の長さ15mm・最大径18mm,ネック部分の長さ7mm・最大径9mm,ボディ部分の長さ42mm・最大径19mm,ストラップリング穴の直径2mmである。ボディ部分のほぼ中央には,電源を入れるための楕円形状のスイッチ穴が設けられ,スイッチ穴からは同じく楕円形状のスイッチがスイッチ穴から滑らかに盛り上がるように設けられている。スイッチ表面には滑り止めの凹凸が設けられている。スイッチ穴近傍のヘッド側本体部分には「ON」の文字が刻まれており,「ON」の文字の凹みの長さは2mm・幅3mmである(色彩については別紙被告商品目録の別添写真目録参照)。


ウ 原告商品と被告商品とを比較すると,原告商品と被告商品は,いずれもプラスチック製であり,?半球状の滑らかな先端部とそれに接続する溝のある円柱からなるヘッド部分,?始端部がヘッド部分に接続し,始端部はヘッド部分より細く,ヘッド部分から離れるに従ってより細くなる円すい状台とこれに接続する蛇腹状の円柱体からなるネック部分,?円柱体に接続する涙型のボディ部分,?ボディ部分末端に空けられた穴に通されたストラップリング及びストラップリングに付けられたカニカン(接続金具),?カニカンに付けられたストラップ紐によって構成され,さらに,ボディ部分のほぼ中央には,電源を入れるための楕円形状のスイッチ穴が設けられ,スイッチ穴からは同じく楕円形状のスイッチがスイッチ穴から滑らかに盛り上がるように設けられている。スイッチ表面には滑り止めの凹凸が設けられている。スイッチ穴近傍のヘッド側本体部分には「ON」の文字が刻まれている。そして,その全長,ヘッド部分の長さ・最大径,ネック部分の長さ・最大径,ボディ部分の長さ・最大径,スイッチ上部の「ON」の凹みの長さ・幅,ストラップリング穴の直径,「ON」の文字の大きさが同じであるから,それぞれの外部の形状はほぼ同じであると認められる。


 他方で,被告商品イ〜ハ,ト及びチは配色が異なる点で原告商品と相違し,被告商品ニ〜ヘはボディ全体がスケルトンである点で原告商品と相違する。


(2) そこで,上記の相違について検討する。


不正競争防止法2条1項3号の「模倣する」とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう(同条5項)。そして,問題とされている商品の形態に他人の商品の形態と相違する部分があるとしても,その相違がわずかな改変に基づくものであって,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な相違にとどまると評価される場合には,当該商品は他人の商品と実質的に同一の形態というべきである。


これに対して,当該相違部分についての改変の着想の難易,改変の内容・程度,改変が商品全体の形態に与える効果等を総合的に判断したときに,当該改変によって商品に相応の形態的特徴がもたらされていて,当該商品と他人の商品との相違が商品全体の形態の類否の上で無視できないような場合には,両者を実質的に同一の形態ということはできない。


イ これを本件についてみるに,原告商品が3種類の異なる配色のものである上,証拠(甲13,32,53)によれば,原告は,原告商品の発売以前である平成21年7月頃,スケルトンカラーの原告商品を検討していたこと,原告は,原告商品の発売後である平成22年3月頃,原告商品とは違う配色の商品を検討していたことが認められるから,異なる配色あるいはスケルトンに改変することが着想として困難であるとは認められないし,このような改変が実際に困難であった事情も見当たらない。


 そして,前記1(3)のとおり,原告商品は,その全長を極端に小さくした構成を採用することによって,電気マッサージ器としても携帯ストラップとしても使用できるものとしたことに形態的特徴があるから,異なる配色あるいはスケルトンに改変することによって,形態全体に与える効果は乏しいものと認められる。これは,被告商品のパッケージには,「ホンモノの電マの1/5サイズ!!」(判決注記:「1/5」は他の文字よりもフォントが大きい。),「全長65ミリ」,「待望の新カラー登場!!」あるいは「スケルトンモデルが新登場!!」等と記載されているが(甲33,45,57,58),その中では新カラーやスケルトンモデルであることよりも,その小ささが強調されていることからも裏付けられる。


 そうすると,原告商品と被告商品との相違は,その相違がわずかな改変に基づくものであって,商品の全体的形態に与える変化が乏しく,商品全体から見て些細な相違にとどまると評価するのが相当である。


ウ したがって,被告商品は原告の商品と実質的に同一の形態というべきである。


(3) 以上のとおり,原告商品と被告商品の商品形態は実質的に同一である。

 そして,前提事実(2)及び(3)のとおり,被告会社は,被告商品の販売以前に,原告商品の販売元として,原告から原告商品を購入していたのであって,被告商品の形態は原告商品の形態に依拠したものである。


 したがって,被告会社は,原告商品の形態を模倣した被告商品を販売したものと認められる。』


 と判示されました。