●平成23(ワ)28857 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴

 本日は、『平成23(ワ)28857 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年7月19日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130726100718.pdf)について取り上げます。


 本件は、不正競争行為差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、まず、原告商品の形態が不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たるか(争点1)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 大須賀滋、裁判官 小川雅敏、裁判官 西村康夫)は、


『1 原告商品の形態が不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たるか(争点1)について

(1) 不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」が保護されるのは,先行者が商品形態の開発のために投下した費用・労力の回収を可能にすることにより,公正な競業秩序を維持するためであると解される。商品の形態がありふれた形態であって,その開発のために特段の費用・労力を要しないような場合は,同号による保護の必要が認められないから,そのような場合には,同号の「商品の形態」には当たらないものと解するのが相当である。


 本件において,被告らは,原告商品の形態は,原告商品に先行して販売されていた電気マッサージ器「フェアリーポケットミニ」(対照商品)の形態と実質的に同一であり,その他電気マッサージ器の形態とも実質的に同一であって,ありふれたものであるとして,不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」に当たらない旨主張する。


 ・・・省略・・・


(3) 以上に基づいて,原告商品と「フェアリーポケットミニ」とを比較する。


 「フェアリーポケットミニ」の基本的な構成は,ストラップ紐を本体に接続するためのストラップリング及びカニカン(接続金具)が存在しない点を除けばほぼ同一である。もっとも,ボディ部分の涙型は,原告商品がずんぐりとした形状であるのに対し,「フェアリーポケットミニ」は細長い形状であるという相違がある。また,このほか,スイッチ部分の位置や形状についても相違がある。このような相違点が存在するものの,両商品の全体の形状が相当程度類似していることは否定できない。


 しかしながら,「フェアリーポケットミニ」は,全長が146mmであるのに対し,原告商品の全長は64mmであり,「フェアリーポケットミニ」の全長の半分未満である。そのため,原告商品が携帯ストラップとしても使用できるのに対し,「フェアリーポケットミニ」は,ストラップを付けることができるものの,携帯ストラップとしての使用に適するものではない。そして,原告商品の発売以前において,原告商品の全長と同じ程度の長さの電気マッサージ器が存在したことを認めるに足りる証拠はない(「フェアリーポケットミニ」の商品説明〔乙5〕では,「世界最小の電マ,フェアリーポケットミニ完成。」と記載されている。)。


 そうすると,原告商品は,その全長を極端に小さくした構成を採用することによって,電気マッサージ器としてのみならず携帯ストラップとしても使用できるものとしたことに形態的特徴があり(原告は,このような新たな用途の商品として開発するため,小型化のための工夫等を含めて費用・労力を投下したものと認められる。),そのような商品は原告商品の発売以前においては存在しなかったのである。


 したがって,先行商品として「フェアリーポケットミニ」存在するからといって,原告商品の形態がありふれた形態であるということはできず,他に原告商品のような用途の商品について類似の形態の商品が流布していたことを認めるに足りる証拠もない。


 以上のとおり,原告商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号によって保護される「商品の形態」に当たると認められる。



(4) これに対し,被告らは,原告商品の全長が短いとしても,電気マッサージ器としても使用できるという点は,「フェアリーポケットミニ」と異なるところはなく,この程度の差異では,原告商品の固有の形態上の特徴ではないし,携帯用ストラップに付随する小物としては通常のサイズであるなどと主張する。

 
 しかしながら,上記(2)のとおり,原告商品は,その全長を極端に小さくした構成を採用することによって,電気マッサージ器と携帯ストラップとしての使用を両立させたことに特徴があるから,電気マッサージ器と携帯ストラップのそれぞれから比較するだけでは不十分であり,被告らの主張は採用できない。』

 と判示されました。