●平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟

本日も、『平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年7月16日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130719163004.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点5(著作者人格権侵害の成否)および争点6(権利濫用の成否)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、裁判官 西田昌吾)は、


『4争点5(著作者人格権侵害の成否)について

(1)本件パンフレットの表紙の作成が原告P1の有する著作者人格権を侵害するものではないこと


ア本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変が原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではないこと

 前記2(2)イ(ア)のとおり,本件イラストをパンフレットの表紙として利用するために広告コピーなどを挿入することが必要であることは明らかであり,この改変について認識もしていなかったことを前提とする原告P1の主張(前記第3の5【原告P1の主張】(1))は採用することができない。


 本件イラストに挿入された被告岡山県の所在を示すハート形についても,本件イラストの作品としての実質的同一性を害することのない微細な改変であるし,本件パンフレットの制作目的に適うものである。これらのことからすると,本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変について,原告P1の許諾の範囲内のものと認めることができるから,当該行為は原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではない。


イ本件パンフレットの表紙に原告P1の氏名表示がないことは,原告P1の有する本件イラストの氏名表示権を侵害するものではないこと


 前記アのとおり,原告らは,本件パンフレットの表紙に本件イラストを利用することについて許諾していたのであるから,これに原告P1の氏名を表示しないことについて承諾していなかったとか,本件イラストの著作権管理について委託を受けていた原告リーブラが認識もしていなかったというのは,にわかに採用しがたい主張である。


 少なくとも,原告P1に対し,金銭的に慰謝されなければならないような氏名表示権侵害に係る損害を生じさせるものであるとも認められない。


(2)本件掲載行為が原告P1の有する著作者人格権を侵害するものではないこと

ア同一性保持権の侵害

 前記(1)アのとおり,本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変は原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではない。


 本件掲載行為は,本件パンフレットの表紙に何ら新たな改変を加えたものではなく,本件掲載行為が原告らによる利用許諾の範囲内の行為であり,適法な引用に当たることも前述のとおりである。


 そうすると,被告新見市及び被告機構が本件パンフレット表紙を本件大学校のウェブページに掲載するに際し,広告コピー及び被告岡山県の場所を示すために挿入したハート形の記載を削除せずに使用したからといって,原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものであるとはいえない。


イ氏名表示権の侵害

 前記(1)イのとおり,本件パンフレットの表紙に原告P1の氏名表示がないことは,原告P1の有する本件イラストの氏名表示権を侵害するものとはいえない。本件掲載行為が原告らによる利用許諾の範囲内の行為であり,適法な引用に当たることも,前記アと同様である。


 そうすると,本件掲載行為が,原告P1の氏名表示権を侵害するものであるとはいえない。少なくとも,本件掲載行為が,原告P1に対し,金銭的に慰謝されなければならないような氏名表示権侵害に係る損害を生じさせるようなものであるとは認めることができない。


5争点6(権利濫用の成否)について


 前記2で検討したところによれば,原告P1は,本件イラストを本件パンフレットの表紙に利用することを許諾していたものであり,それが広く一般に流通配布されることも当然に認識しており,本件パンフレットの二次利用についても許諾していたものである。


 また,前記3のとおり,本件掲載行為の目的は,被告岡山県の事業を広報するという本件パンフレットの制作目的に適うものであり,その態様も当該制作目的に沿って何らの改変を加えることもなく利用したものである上,著作権者の利益を不当に害するようなものであるということのできる事情もない。


 前記4のとおり,本件掲載行為について,原告P1に対し,金銭的に慰謝しなければならないような著作者人格権侵害に係る損害を生じさせる行為であるということもできない。


 これらのことからすれば,原告らによる本件各請求は,少なくとも権利濫用に当たり,許されないものというべきである。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。