●平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟

本日は、『平成24(ワ)10890 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年7月16日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130719163004.pdf)について取り上げます。


 本件は、著作権に基づく損害賠償請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、争点4(引用の成否)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、裁判官 西田昌吾)は、


『3争点4(引用の成否)について

 以下のとおり,本件掲載行為は,著作権法32条1項の引用に当たる。


(1)引用の意義

 著作権法32条1項によると,公表された著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用することができると規定されている。引用の目的上正当な範囲内とは,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要であり,具体的には,他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか,その方法や態様,利用される著作物の種類や性質,当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならない。


(2)本件掲載行為が引用に当たること

 別紙ウェブページ記載のとおり,本件パンフレットの表紙(本件イラストを含む。)は,被告岡山県の事業である「新おかやま国際化推進プラン」を紹介する目的で掲載されたものであることが明らかである。


 その態様も,前記2(2)イ(イ)のとおり,被告岡山県の事業を広報するという目的に適うものであり,本件パンフレットの表紙に何らの改変も加えるものでもない。


 しかも,このような本件掲載行為の目的,態様等からすると,著作権者である原告P1の利益を不当に害するようなものでもない。


 以上に述べたところからすれば,本件掲載行為は,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるということができ,「公正な慣行」に合致するということもできるから(原告もこのことについては明示的に争わない。),適法な引用に当たると解するのが相当である。


(3)原告らの主張について

 原告らは,? 本件掲載行為に係る別紙ウェブページの記載(被引用物)が著作物ではないこと,? 原告らの著作権が表示されていないこと,? 主従関係にはないこと,? 本件掲載行為が同一性保持権を侵害することからすれば,引用は成立しない旨主張して争っている。


 このうち上記?の主張について検討すると,旧著作権法30条1項第2では「自己ノ著作物中」に引用することが必要とされていたものの,同改正後の著作権法32条1項では明文上の根拠を有しない主張である。その点はさておくとしても,別紙ウェブページの記載は相当な分量のものであり,内容・構成に創作性が認められる(選択の幅がある)ことからすれば,その著作物性を否定することは困難である。


 上記?の主張について検討すると,本件パンフレットの表紙には原告P1の氏名の表示がないものの,後記4のとおり,このことは原告P1の氏名表示権を侵害するものではない。そうすると,本件パンフレットの表紙は無名の著作物であり,著作権法48条2項により出所の表示の必要がないから,上記?の主張にも理由がない。


 上記?の主張については,前記2(2)イ(ウ)のとおり,別紙ウェブページにおける本件パンフレットの表紙の記載はウェブページ全体の中ではごく一部であり,主従関係にあるものと認められるから,上記?の主張も採用できない。


 上記?の主張に理由がないことは,後記4で述べるとおりである。


 よって,原告らの主張はいずれも採用できない。


 なお,別紙ウェブページ記載の態様からすれば,本件パンフレットの表紙の部分は,他のウェブページの記載と明瞭に区別することができる。』

 と判示されました。