●平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟

  本日は、『平成24(ワ)25843 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟 平成25年7月18日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130719105827.pdf)について取り上げます。


 本件は、著作権侵害差止等請求事件でその請求が棄却された事案です。


 本件では、争点(1)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二、裁判官 �癲橋彩、裁判官 植田裕紀久)は、


「1争点(1)について

(1) 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)をいうのであって,表現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。


(2)これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。


 しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。


 さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表1.3バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,証拠(甲1,乙1,4,10の1〜3・5・7・8・10〜12)及び弁論の全趣旨によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。


 そうすると,本件書籍の各表は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である


2小括

 以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。


第4結論

 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。」


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。