●平成24(行ケ)10292 審決取消請求事件 特許権「強接着再剥離型粘

 本日も、『平成24(行ケ)10292 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「強接着再剥離型粘着剤及び粘着テープ」平成25年6月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130702135137.pdf)について取り上げます。


 本件では、取消事由2(理由不備の違法)についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 大鷹一郎、裁判官 齋藤巌)は、


『3取消事由2(理由不備の違法)について

(1) 原告は,本件審決では,その11頁21行目と13頁14行目において,それぞれ異なる理由付けからサポート要件がないとの判断を示しているが,その2つの異なる理由の関係は明らかでないから,本件審決には理由不備の違法があると主張する。


 しかしながら,審決書をみると,本件審決は,サポート要件の適合性の判断について,当裁判所の上記判断と同様の手法を採用した上で,その11頁21行目までは,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かを検討して,これを否定し,さらに,その後の13頁14行目までは,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して,これも否定したものである。


 そうである以上,本件審決について,原告が主張するように,その理由付けの論理的関連性が明らかでないという意味での理由不備の違法があるということはできない。


したがって,原告の主張は,採用することができない。


(2) 原告は,本件審決はサポート要件について,実施可能要件と同様の手法により判断しており,許されないと主張する。


 そこで検討するに,本件審決は,本願発明が発明の詳細な説明に記載されているというためには,本願発明で使用する粘着剤について,技術的な裏付けをするのに十分な記載がされることが必要であり,具体的には,それを製造ないし入手できるように記載されていることが必要と認められるなどと述べているところ,これらの説示は,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の記載から十分にサポートを受けているかという観点から述べられたものであると認められるから,かかる説示が許されないものということはできない。


 したがって,原告の主張は,採用することができない。


(3)原告は,貯蔵弾性率G’及びtanδはその技術的意義や測定方法が明確な物性値であり,特許請求の範囲の記載は明確であって,技術的範囲についての解釈に疑義はないから,本願発明に係るサポート要件について,知財高裁大合議判決で用いられた判断手法をそのまま適用することは不当であると主張する。


 しかしながら,サポート要件の適合性については,知財高裁大合議判決で用いられた判断手法と同様に,前記2記載の観点から判断されるべきであるから,これと同様の手法により本願発明に係るサポート要件について判断した本件審決の判断手法が不当であるということはできない。

 したがって,原告の主張は,採用することができない。

(4)小括

 よって,取消事由2も理由がない。』

 と判示されました。


 なお、本事件中で引用している知財高裁大合議事件は、●『平成17年(行ケ)第10042号 特許取消決定取消請求事件「偏光フィルムの製造法」平成17年11月11日 知的財産高等裁判所』(http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/pdf1/g_panel/10042.pdf)です。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。