●平成24(ワ)8972 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟

 本日は、『平成24(ワ)8972 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成25年5月30日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130612161942.pdf)について取り上げます。


 本件は、不正競争行為差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、まず、争点1(原告各商品の形態は不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」として保護されるか)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒、裁判官 松川充康、裁判官網田圭亮)は、


『2争点1(原告各商品の形態は不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」として保護されるか)について


(1)不正競争防止法は,先行者の開発利益を保護することを目的として,新たな商品の形態を模倣する行為は,その形態が当該商品の機能を確保するために不可欠である場合を除き,新たな商品が最初に販売された日から3年を経過しない範囲で,これを不正競争とする旨を定めた(同法2条1項3号,19条1項5号イ)。また,同法は,上記保護の対象となる商品の形態について,「需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう」と定める一方で,形態に創作性,独創性のあることをその保護の要件とはしていない(同法2条4項)。


(2)本件において,原告商品?は婦人用のハンドバッグであるが,原告商品?の形態は,婦人用ハンドバッグであることによって必然的に導かれる形態ということはできず,何らかの特定の効果を奏するために必須の技術的形態ということもできない。


 原告商品?の販売以前に,原告商品?と同様の婦人用のハンドバッグにおいて,外観にティアード型のデザインを用いた商品も存するところである(甲16,17,24)。しかしながら,原告商品?は,形状及び大きさが22cm×30cm×12cmで,3段ティアード型のハンドバッグであり,内部構造に両あおりを採用したものであるところ,上記先行商品は,いずれもこのような特徴を備えるものではないことから,原告商品?の形態が個性を有しないということはできない。


 すなわち,甲16,17のハンドバッグは,形状及び大きさが25cm×25cm×8cmで,二段ティアード型のハンドバッグであり,原告商品?とは異なる。また,甲24のハンドバッグは,形状は台形型で,4段ティアード型のハンドバッグであり,原告商品?とは異なる。



(3)また,本件において,原告商品?は婦人用のショルダーバッグであるが,原告商品?の形態は,婦人用ショルダーバッグであることによって必然的に導かれる形態ということはできず,何らかの特定の効果を奏するために必須の技術的形態ということもできない。


 原告商品?の販売以前に,原告商品?と同様の婦人用のショルダーバッグにおいて,外観にティアード型のデザインを用いた商品も存するところである(甲10〜15)。しかしながら,原告商品?は,形状及び大きさが26cm×26cm×7cmで,三段ティアード型のショルダーバッグであり,内部構造に両あおりを採用したものであるところ,上記先行商品は,いずれもこのような特徴を備えるものではないことから,原告商品?の形態が個性を有しないということはできない。


 すなわち,甲11のショルダーバッグは,形状及び大きさは23cm×26cm×10cmであり,原告商品?とは異なる。また,甲12のショルダーバッグは,形状及び大きさは22cm×26cm×10cmであり,原告商品?とは異なる。甲13〜15の各ショルダーバッグも,形状は長方形型であり,原告商品?とは異なる。さらに,甲24のショルダーバッグは,形状は台形型で,4段ティアード型のショルダーバッグであり,原告商品?とは異なる。


(4)被告らは,バッグ業界において,バッグの形態における外形上の設計的事項や内部構造は適宜選択・変更されるのであって,これらを外形上の基本的形態と組み合わせることは慣行化され,一般的に行われていることであるとした上で,原告各商品は,その構成の各部分の形態がありふれていて,かつ,それらの組み合わせによって生じた商品全体の形態もありふれたものであり,開発者の特段の努力や時間・費用を要したものであるとは認められないことから,原告各商品の「商品の形態」は不正競争防止法2条1項3号により保護されない旨主張する。


 しかしながら,前記(1)で述べたとおり,同号が保護する商品の形態は,外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様等からなる商品全体の形態をいうのであって,創作性,独創性は求められないから,その商品の形態を構成する個々の要素が従来の商品形態に見られる特徴の組み合わせであったとしても,全体として新たな商品形態となる以上は,同号による保護を否定する理由はないというべきである。


 特に,婦人用バッグを需要者が選択する場合,基本的な形状と大きさ,施されたデザイン,持ち手等の形状や位置,付加的装飾の有無形状,素材の選択や加工といった点が嗜好又は用途に合致するかといった観点のみならず,収納部の設け方や容量,あるいは開閉の方法といった内部の形状に属する点が嗜好又は用途に合致するかといった観点から検討がなされると考えられるから,これらの点について,個別にみると同一の部分的形態を有する商品が,原告各商品の販売以前に存在したことが認められるとしても,全体としての形態において,これらを組み合わせた商品が存在していなかった以上,当該商品を初めて市場に出した者は,その形態を模倣する者との間では,先行者として保護されるべきである。


 したがって,被告らの上記主張は採用できない。


(5)以上によれば,原告各商品の形態は,不正競争防止法2条1項3号の「商品の形態」として保護されるというべきである。』


 と判示されました。